第26話


 迷宮でのレベル上げを終えて宿へと戻ってくると、いつも使っている二人用の席にオルエッタはすでに着席していた。


「あっ、レウニスさん! お帰りなさい。もう用事終わったんですか?」

「……まあな。ていうか、別に先に食べ始めても良かったんだぞ?」


 オルエッタは席に座っていたが、まだ水しかもらっていないようだった。


「そんな、レウニスさんと一緒に食べたかったんですっ。ほら、早く座ってください」


 変に律儀なところがあるオルエッタが、俺の対面を指差してくる。

 空腹でぶっ倒れられても困るので、すぐに椅子に座ると、オルエッタは店員に声をかけて食事を運んできてもらった。

 食事を運んできてくれたのはいつも対応してくれているリエさんだ。彼女は俺に気づくと、笑みを浮かべた。


「もう、彼氏さん。オルエッタちゃんをあんまり待たせちゃダメよ?」

「いや、彼氏じゃないんですけど……」

「いやね。もう照れなくてもいいのよ?」


 リエさんがからかうような調子でそんなことを言ってくる。

 ……二人で、年齢も同じように見える俺たちは、どうやらそんな誤解をされてしまうようだ。

 リエさんが食事を置いて去っていくと、オルエッタはすぐに両手を合わせてから食べ始めた。


「おい、オルエッタ。なんか変な誤解されていたけどいいのか?」

「別に、それで困ることはありませんし。それより、例の件、どうでしたか?」


 オルエッタはあっけらかんと首を傾げながら聞いてきた。

 まあ、俺も別に何か困るというわけではないので、とりあえずはいいか。

 俺はギルド職員と話した内容について、オルエッタに分かるように説明をすると、


「……うーん、つまり高ランクの代表者がいればいいということなんですねぇ」

「そうなんだけど、すぐに思いつかなくてな」

「うーん……私も思いつきませんね。クランに聞いてみても、そんなにランク高くないですし、ベーグルティに拠点はありますし……」


 オルエッタがぽつりと漏らした内容を、俺は聞き漏らさずに問いかける。


「そういえば、オルエッタってクランに所属しているのか? ダムマイアー家の子なんだよな?」


 ラグロフがダムマイアー家は、『仮面の英雄』というクランを持っていると、言っていた。

 俺もその名前くらいは聞いたことがあった。

 かつては、Sランククランとして有名であり、当時のクランリーダーが仮面をつけていたことから、そういう名前になったのだとか。


 その仮面は代々クランリーダーへと受け継がれていっているが、今はかなり落ちぶれてしまって、Cランククランとなってしまっているのだとか。

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