第27話



「わっ、知っていたんですか?」

「前に俺が友人のラグロフと話したことあっただろ? ラグロフがオルエッタのことを知っていて、それを聞いただけなんだがな」

「なるほどっ! はい、私はダムマイアー家の次女なんですが、クランには所属してませんね」

「……そうなんだな。事情を聞いてもいいのか?」


 基本的に貴族の子どもというのはだいたいの場合が自分の家が管理するクランに所属するものだ。


 基本的には長男、長女などがクランを継いでいくため、オルエッタの場合はある程度自由なことが多いと思うが、オルエッタはステータス的に見れば優秀だし、家も手放さないと思うが。


 ただ、訳アリ、という可能性も拭えない。

 俺の質問にオルエッタは笑顔で言った。


「私は今、武者修行の途中なんです!」

「武者修行?」

「はいっ! 今はお姉ちゃんがクランの管理をしているんですけど、私には自由に冒険者になっていいからって自由にさせてくれてるんです! だから、今のうちに強く……強くなってお姉ちゃんを支えたいと思いまして! それで、頑張っているんです」


 オルエッタが拳を固め、そう宣言した。





「なるほどな」


 思っていた以上にオルエッタの強さを求める心、そして家族を支えたいという理由は立派なものだった。


 誰かのために、頑張るか。そんなことができるなんて、オルエッタは凄いな……。

 俺にはない純粋さに、素直に関心していると、オルエッタは固めていた拳を緩め、頬をかいていた。


「……や、やっぱりちょっと理由としては変ですかね?」

「いや、立派な理由だ。家族のために頑張りたいっていうか……誰かのために力をつけたいっていうのは、俺も同じだからな」

「……そ、そうですかね?」


 オルエッタは珍しく頬を赤らめ、恥ずかしそうにしていた。

 彼女のそんな反応を見るのは初めてで、新鮮だ。


「そんな恥ずかしがる必要ないだろ? オルエッタの考えは立派なものなんだからな」


 改めてそう言うと、オルエッタは頬を赤くしながら俯きがちに口を開く。


「……い、いえその……私、この職業を手に入れてから、この気持ちを同じ冒険者の方に伝えたときに……笑われてしまいまして……えへへ、だから、そう言われてとても嬉しかったです。ありがとうございます、レウニスさん」


 なぜかお礼を言われてしまった。

 別に俺は自分の思ったことを伝えただけだ。


「でも、結局『仮面の英雄』は王都にはないんだから、頼れないよな。別の代表者を用意する必要があるとして……それを誰にするか、だな」

「……うーん、代表者にできる人ですよね? 難しいですねぇ……」


 俺たちはうんうんと唸りながらこれからについて考える。

 ただ、オルエッタはその間にもバクバクと食べ勧めていたので、正直真剣に考えてくれているかは疑問だ。

 そんなことを考えながら食事をしていると、視界の端で見慣れた冒険者たちの姿があった。


 俺に絡んできた冒険者たちだ。

 向こうもこちらに気づいたようだ。びくりと肩を上げると、顔を逸らして逃げるように歩いていく。


「おい、ちょっといいか?」

「ひぃぃ!? な、なんですかぁ!?」


 素っ頓狂な声を上げる冒険者。三人組のリーダーと思われる彼が、代表して俺を見てくる。

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