第28話
「おまえたちの冒険者ランクはいくつだ?」
「し、Cランクですが……」
「……なるほどな。それだと、さすがに代表者としてはちょっと難しいか」
彼らと俺の関係なら、頼めば引き受けてくれそうではあった。
俺の言葉に、冒険者は首を傾げた。
「だ、代表者……ですかい?」
「ああ、そうだ。俺の事情はある程度分かってるだろ? 迷宮の件で、俺の代わりの代表者を探しているんだよ」
「……ああ、なるほど。確かに、兄貴はそんなに強くなさそうに見えますもんね……」
実体験もあってか、冒険者の声は震えていた。
「なあ、知り合いに高ランクの冒険者で引き受けてくれそうな人っていないか?」
俺の質問に、冒険者たちは顔を見合わせる。
それから、あっ、と揃って声を上げた。
「……知り合いってほどじゃないですけど、もしかしたらあの人なら話は聞いてくれるかもしれないですね」
「あの人? その人は王都にいるのか?」
「え、ええまあ。だいたいカジノにいまして……今日オレたち、ステータスが回復するまでカジノに行っていたんですけど、今日もいましたし」
カジノ、と聞いて俺の前世の記憶が僅かに蘇る。
もしかしたら彼らが話している人って、俺が前世で冒険者活動をしていたときにお世話になった人と同一人物かもしれない。
「……もしかして、その人ってラーナって言わないか?」
俺の脳裏には、オレンジ混じりの赤髪を揺らす女性の姿が浮かんでいた。
「そ、そうですよ! なんだ、兄貴も知っているんじゃないですか。ラーナさんなら、もしかしたら引き受けてくれるかもしれませんよ? あの人、冒険者の教育は好きですし」
ラーナさん、か。
カジノが好きで、冒険者の教育に熱心な冒険者といえば、俺が知っているラーナさんと同一人物だろう。
「ラーナさんってまだカジノにいると思うか?」
「ど、どうでしょうか?」
「三人はラーナさんと交流があるんだよな?」
「ええ、まあ。オレたち、ラーナさんに冒険者のいろはと、カジノについて教えてもらったんで」
「へぇ、ラーナさんは、人から金を借りろ、って教えたのか?」
「い、いや……それは……」
ラーナさんはカジノと酒が好きではあるが、非合法なことは嫌いだ。
俺も本気で怒っているわけではなく、あくまでこちらの頼みを利かせるためのものだ。
俺は笑みを浮かべる。
「まあ、別に気にしてないさ。それで、夕食の後でいいんだけど、カジノまで案内してもらってもいいか?」
俺が努めて優しく言うと、彼らはぶるりと震えあがり、無言のままに頷いた。
おかしい。俺の予想していた反応と何だか違うな。
まあ、俺の話は通せたのでいいけど。
食事を再開すると、こちらをじーっと見ていたオルエッタと目が合う。
「どうした?」
「カジノ……行くんですよね? 私もついていきますよ!」
え? 俺は一人で行くつもりだったので、彼女の提案に固まる。
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