第117話




 いよいよだ。

 夕方になり、測定のほとんどが終わり、残るはラグロフ、オルエッタ、俺の三人だ。

 次はラグロフの検査となるため、その注目度は凄まじい。


 ……これまでにも新規で高ステータスの評価を受けた人たちはいたが、ラグロフの時間にはその数倍の記者たちが集まっていた。

 ラグロフの能力測定に関して、この目で見ようと集まっているのだろう。


 それは記者だけではない。ラグロフの関係者はもちろんだが、他クランの人間の姿も見られた。


「……『ハンターブロー』と『飛竜の爪』、それに『アルケイク』もか」


 俺が一番驚いたのは、そのSランククランのリーダーたちまでもが、この場に来ているということだ。

 俺も何度か新聞記事で彼らの顔を見てはいたので、知っていた。


 皆年齢的には二十後半ほどなのだろうが、迫力はかなりのものだ。

 彼らが生み出す覇気のようなものが理由なのか、誰も彼らの周りにはいないので、あそこだけ空いている。


 一人だけ、知っている顔の人もいた。

 リベティだ。あそこにいるってことは、それなりの立場の人なんだな……。

 たまたまそちらを見ていると、目が合って小さく会釈されたので、同じように返した。そんなリベティは隣にいた美人なリーダーさんに、何やら問いかけられ、こちらを見てきていた。


 クランにすでに所属しているラグロフだが、決してスカウトできないわけではない。


 ラグロフが他のクランに入るというのは考えられないし、そもそもクランリーダーたちもラグロフをスカウトに来たのではないだろう。

 その最大の理由は新たなSランク冒険者の出現を警戒してのものだろう。


 自分のクランを脅かす存在になるかもしれない。そんな考えから、直接確認したいのかもしれない。


「それでは……こちらのクリスタルに手を触れてください」


 能力測定を執り行う職員も、ラグロフを見て緊張している様子だ。

 皆の注目が彼へと集まり、そして……クリスタルに触れた。

 クリスタルが光を放ち、その輝きが虹色になる。


 そして、ステータスが空へと映し出された。


 ラグロフ レベル31 職業:勇者

 HP1141 MP1004/1004 力1180 体力1032 魔力1015 速度1151 

 職業スキル【勇者:レベル15】【勇者魔法:レベル10】【勇者の心得:レベル5】

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