第40話
しばらく迷宮にてレベル上げを行っていた俺だったが、今はギルド前へと来ていた。
今日から、迷宮攻略開始となる。
待ち合わせ場所であるギルド前には、すでに俺以外の全員が来ていた。
一応、集合時間十分前だったのだが、今回の人たちは皆時間を守る人のようだ。
駆け足気味に向かい、本人確認を終えた後、俺は荷物持ちの人たちとともに並んだ。
荷物持ちは今回も三人。
一人は美しい女性で、もう一人は大柄な男性だ。
どちらも年齢は俺とそう変わらないように見える。
ただ、女性の方はその容姿もさることながら、身に着けている装備品のネックレスや腕輪などは見るからに高価そうなものだ。
武器はどうやら体内にしまっているようだが、きっとそれも高価なものなんだろう。
……恐らくだけど、貴族の冒険者だろうと思う。
なのに、荷物持ちでの参加だなんて珍しいな。
「今回は、クラン『ピアスアーマー』さんが主になって攻略を進めていくことになります。それでは、ベヨングさん。あとはよろしくお願いします」
「ええ、分かりました」
クランが?
ギルド職員の引継ぎに、ベヨングと呼ばれた男性は柔らかな笑みを浮かべる。
温厚そうな人だ。彼は俺たちの前に立つと、すっと一礼をした。
「初めまして、私はベヨングと申します。クラン『ピアスアーマー』のリーダーを務めています。今回、攻略班の七人は私の部下たちで構成しているんですよ」
なるほど。だから、俺たちに挨拶をしてきたのか。
俺たちも一礼を返すと、ベヨングはにこりと微笑んだ。
「皆さんは荷物持ちにどうか集中してください。我々がいれば、Eランク迷宮ならば問題なくクリアできますから。それでは、詳しい話は移動しながら行いましょうか」
ベヨングが歩き出し、俺たちはすでに分けられていたカバンを背負い、その背中を追っていった。
『ピアスアーマー』はDランクのクランだそうだ。
リーダーのベヨングは、Cランク冒険者であるが、構成員のほとんどがDランクからEランクなんだとか。
今回の攻略では、Cランクのベヨングが一人、Dランクが三人、Eランクが三人という構成らしい。
Eランク迷宮にどうしてそのようなランクの冒険者が? と疑問には思ったのだが。
「どうにも、迷宮奥地から強い魔力が感じられたそうなんですよ。ですので、念のため余裕のあるパーティーで挑むようにギルドが調整したそうなんですよ」
俺の疑問にベヨングがそう答えてくれた。
……迷宮のランク判定はあくまでギルドが行っている。
その判定方法は、実際に戦闘を行ってみたり、迷宮内に満ちている魔力の測定だったりで、判断される。
スキルで明確に、Eランク、と判定されるわけではないので、実際のところはその時対応した職員なり、冒険者なりによるところも大きい。
まあ、ある程度の経験者が調査を行うし、基本的には高く見積もって結果を出すため、大きく間違えることはない。
べヨングを先頭に、パーティーは進む。
俺たち荷物持ちの護衛として、後方にも二名がついている。
さすがに、クランを経営しているだけはあり、荷物持ちへの守りもしっかりとしているな。
俺は、一緒になった荷物持ちの子たちに視線を向ける。
ちょうど、女性と目が合って柔らかく微笑まれた。
金色の長髪を揺らす、美しい女性だ。少し笑顔が子どもっぽい。
彼女の名前はオルエッタ。
道中に軽く自己紹介をしているので、名前は覚えていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます