第60話


 俺の影から生み出された黒い分身が、俺とは別に動いていく。

 

 この分身は俺の体以上に大きくすることはできないが、小さくすることは可能だ。

 様々なサイズに変更可能でまた、彼らが得た情報は意識すれば俺が共有することも可能だ。

 なので、小さくして忍ばせておくと、隠密行動させる場合にも便利だ。


 作れる数に制限はないが、それだけMPの消費も増えることになるので、考えて使用する必要がある。


 また、分身の性能は魔力に応じて上がるようなので、【劣勢強化・魔力】をセットしておけば、より強い分身体ができるのだが……そうなると俺自身が弱くなるからな。


 今回は魔力の強化をしていないので――陽動としての使用だ。

 俺の分身は【誘い+】を発動し、サハギンキングの注目を集めてくれる。

 

 サハギンキングは俺の分身に注目し、攻撃を放っていく。

 速い。

 俺の分身体へと槍を放つ速度はかなりのものだ。

 分身体は一、二度防ぐので精一杯で、弾かれてしまった。やはり、魔力で強化されていないので、能力は低いな。


「ギャギャ!」


 すぐに俺へと視線が向いたのだが、すでに俺は攻撃の間合いへと踏み込んでいる。

 俺はスキル【ブラッドスイング+】を放った。


 【暗黒騎士】のレベルを上げたことによって強化された【ブラッドスイング+】がサハギンキングの左腕へと当たり、その体を殴り飛ばした。


「ギャッ!?」


 だが、一撃では仕留めきれない。

 もしかしたら、【劣勢強化・力】にしておけば一撃で持って行けたかもなぁ。

 

 ただ、ステータスの速度がなければ、サハギンキングに捉えられていた可能性もある。

 

 なんてことを考えながら、俺は【シャドーアバター】を発動し、分身に追撃させる。

 分身が【ブラッドスイング+】を放つと、サハギンキングが地面へと埋まるかのように叩きつけられた。


「でやあ!」


 さらに、そこへオルエッタが持っていたハンマーを振り下ろし、その頭を打ちぬいた。

 サハギンキングを注視すると……もう動かない。

 その体が霧のように消えていき、オルエッタはハンマーを肩にのせながらピースをしていた。

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