第119話



「な、何者だあの子!?」

「と、というか、レベル高すぎないか!?」

「一体何がどうなってるんだ……っ」


 驚いたように声を上げる周囲の人々。

 Sランククランの方を見てみると、彼らもさすがに驚いているようだった。

 リベティはある程度予想していたのか、冷静な様子で『アルケイク』のリーダーに耳打ちをしていて、リーダーさんは舌なめずりをしているな。


 ……あーあ、オルエッタも目をつけられたな。

 そんなことを考えていると、オルエッタが両手をぶんぶんと振ってきて近づいてきた。


「レウニスさん、ラグロフさん! 私ももうすぐでSランクになれそうですよ!」

「凄いな、オルエッタ! まさかそれほどの実力者だったとは。どうだ? 今度、手合わせでも……」


 ラグロフも珍しく興奮している。

 ラグロフも抜けている部分があるというか、子どもっぽい部分があるため、オルエッタと少し相性が良いのかもしれない。


 そんなことを考えていると、オルエッタがぺこりと頭を下げてきた。


「ここまで成長できたのは、レウニスさんのおかげです! ありがとうございますね!」

「……ああ、いやいいんだ。それじゃあ、俺も測定してくるな」

「はい、頑張ってください!」


 オルエッタに続いて、俺も能力測定のためにクリスタルへと向かう。

 俺を見た冒険者たちは、今度こそ帰りかけている。

 ああ、さっさと帰ってくれ。

 正直、この空気の中で測定するのは嫌だったので、人がいなくなる分には大歓迎だ。

 

 ただ、『アルケイク』のリーダーとリベティは俺にかなりの注目をしているようで、一切目を離さない。

 しばらく、面倒事に巻き込まれるかもしれないな、と考えながら、俺はクリスタルへと手を差し出す。

 

「……はああああああ!?」


 それまでとは比較にならない叫び。

 それは職員だけではなかったのかもしれない。

 会場全体が揺れるほどの声に、俺は片手で耳を押さえ、少しでも音量を下げようとしながら、頭上に表示されたステータスへと視線を向ける。


 レウニス レベル71 職業:暗黒騎士

 HP2/2(限界値) MP891/871 力2405 体力839 魔力908 速度2383

 職業スキル【暗黒騎士:レベル15】【暗黒魔法:レベル30】【暗黒騎士強化:レベル0】【余りポイント:25ポイント】


 実は、レベル70を過ぎたときに、スキル枠が一つ増えたので、今は【根性】【オートヒール】【劣勢強化・力】【劣勢強化・力】【劣勢強化・速度】【劣勢強化・速度】にしている。

 力と速度は、2.25倍された数値、というわけだ。


 俺は自分のステータスを見て、改めて思う。

 ……ひくっ!

 ラグロフの倍のレベルがあったにもかかわらず、ステータスの基本的な数値はほぼ互角。

 【劣勢強化】がなければ、俺なんてほんと雑魚だな……とは思っていたのだが、


「え、Sランク級の、冒険者、です! レウニスさんも、Sランク級の冒険者です!」


 絞り出したように言った後、職員は宣言するように大声を上げる。

 それに合わせ、周りの注目が集まってきていて、それがあまり居心地よくはなかった。

 

 これで、俺の第一の目標は達成された。

 これで、ようやく俺は入り口に立てたんだ。

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タイムリープした【暗黒騎士】は未来知識で無双する〜不遇職として追放された俺が、最底辺から成り上がる〜 木嶋隆太 @nakajinn

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