第75話
「ああ。……オルエッタ・ダムマイアーだったはずだ。オレの一つ前に成人の儀を受けていたから記憶に残っている」
「そうなのか。ダムマイアー家って……確かクラン持っていたよな?」
「ああ。Cランククラン、『仮面の英雄』だったはずだ。それにしても、あの子とは知り合いだったのか?」
ラグロフが所属しているクランは『ブライトアーミー』というAランククランだ。
ラグロフの父がクランリーダーを務めていて、ラグロフがいずれはそこを引き継ぐという計画だろう。
……前世では、ラグロフの死とともに消滅したクランだ。
それにしても、『仮面の英雄』か。そのクラン名だけは歴史の勉強をしたときに聞いたことがあった。
昔は優秀なクランだったが、最近は跡継ぎの子たちが才能に恵まれず……かなり落ちぶれてしまったとか。
今では、『仮面の英雄』の活躍についてはまったく聞かない。
「たまたま迷宮で会ってな。パーティーの申し込みがあって、まあステータスも高かったから今は一緒に行動しているところだ」
「そうか。迷宮、か。調子はどうなんだ? レベルはいくつになったんだ?」
「今は25だな」
「25だと!? もうそんなになるのかっ!」
ラグロフが目を見開き、声を張り上げる。
その声量と言ったら、近くで見守っていた女性がびくっと跳ねるほどだ。
「まあ、な。一応ソロで潜ってるから経験値効率がいいんだよ」
「なるほど……リア、聞いていたか?」
ラグロフは女性の名を呼びながら、そちらを見る。
「聞いていましたが……まさか、ソロで潜るとは言いませんよね?」
「レベル上げの効率を考えればその方が良いだろう?」
「ダメです! あのですね……! ソロで潜るとなれば、怪我も増えるものです! 気を付けていても、迷宮では何が起こるかわかりませんからね! もしもそれで、後遺症が残るような怪我をしたらどうするのですか!? あなたも、ソロを勧めるようなことを言わないでください!」
リアがむすっと声を荒らげ、俺とラグロフを睨んでくる。
ラグロフは残念そうに息を吐き、俺は苦笑を返す。
正直、ラグロフくらいのステータスなら、たぶん大丈夫だとは思うけどな。
まあ迷宮内というのは、万が一が起きないとも限らないので絶対大丈夫とは言えないけどさ。
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