第67話



「まあ、彼はユシー家の長男のようですから金銭に関してはそちらがどうにかするでしょうね。クランの方に責任を取らせようと思ったのですが、すでに彼は除名したそうなので、こちらにとって都合良く使わせてもらう予定です」

「クラン、辞めさせられたのか?」

「クランの資金を勝手に使おうとしたのですから除名理由としては十分ですよ」


 ……まあ、確かにそうだな。

 元々はクランとしてお目当ての物を購入しに来ていたのだろうしな。

 出口が見えてきて、久しぶりの日差しに目を細める。


「それでは、またのご利用をお待ちしております」


 丁寧に頭を下げた彼女は、兄を蹴りまくっていた人物と同じとは思えない。

 軽く伸びをしていると、オルエッタが笑顔とともに覗きこんできた。


「良かったですね。お安く購入できて」

「そうだな。……さて、あとはスキルが発動するかどうか、だな」

「つまり、一度HPを削る必要があるということですね。蹴りましょうか?」

「いや、やめてくれ」

「では拳にしましょうか?」

「俺に恨みでもあるの?」

「ありませんよ! 善意ですよ!」

「……自分でやるから、大丈夫だ」

「なるほど。自傷がいいとっ。分かりました!」


 言い方に悪意ない? と思ったがこれ以上付き合っても仕方ない。

 スキルの効果を試すため、俺はさっそく【オートヒール】を発動する。

 自分自身を【オートヒール】状態にし、これによってHPが削られれば自動で自分に【ヒール】をかけるのだ。


 俺は少し力を籠めて、腹を殴ってみた。

 痛い。

 HPが減って……そして、回復した。


「どうでしたか?」

「ああ、ちゃんと発動してるっ」

「本当ですか? 良かったですね!」


 パチパチと拍手をして喜んでくれるオルエッタ。

 ……とりあえず、これで俺のタンクとしての立場は確立された。

 あとは、ひたすらレベルを上げるだけだなっ。




 次の日。

 宿で休んでいた俺の部屋がノックされた。

 一体誰だろうか?


 オルエッタか、宿の店員くらいしか訪れることはないだろう。

 そう思って扉を開けると、そこには兵士たちがいた。

 ……ユシー家の家紋をつけていて、一体何事かと思っていると。


「ついてこい」


 兵士たちは俺に武器を突きつけ、そういった。

 ……一体何事だ?

 困惑しながら、ひとまず両手を上げる。


「何がどうなってるんだ?」

「昨日、バルーダ様を騙したらしいな。当主様……おまえの元父がお呼びだ」

「……なるほど、な」


 そういう風に、話を持っていったのか。

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