第103話
「そいつらは……なに?」
「俺の分身だ。こいつらが得た情報をぼんやりと得られるから……つまりまあ、迷宮の構造を把握できるってわけだ」
そういいながら、分身たちに指示を出し、迷宮の調査を行ってもらう。
彼らの移動速度は、かなりのものであり森のほうへと向かっていく。
「あたしたちも森のほうに移動しておくわよ。ここら辺に通路ないみたいだし」
平原で見渡せるため、フィンの言う通りだ。
俺たちは平原を移動していき、道中の魔物はすべてフィンが片づけていく。
……さすがの強さだな。
というか、何もしていないのに経験値をもらっているのは申し訳ないな。
ちょうどレベルアップしたのでそんなことを考えながら、森近くまで移動する。
「調査はまだ終わらないの?」
「とりあえず、森を突っ切るぞ。その先に道が三つあるみたいだ」
「その先はどうなの?」
「左右の二つはハズレみたいだな。行きついた先は行き止まりで魔物しかいないみたいだ」
「ってことは、可能性があるとしたら中央の道、ってことよね?」
「ああ。とりあえずはそこは一本道みたいだが、まだ状況が分かっていないな」
変な仕掛けがある可能性はある。例えば、中央の道の行き止まりで仕掛けを解除すると、別の道に新たな道が解放される可能性とかな。
森内を移動していくフィンの足取りは早い。
どうにも焦っているようにも見え、時々精彩を欠いた攻撃で敵を仕留めきれていないこともあった。
それでも、特に反撃をもらうことはなく、次の攻撃で仕留めてはいるので、問題はないのだが。
敵の数が増えれば手も貸せるのだが、出てくる魔物が一~二体だけなので、下手に手を出すとフィンの機嫌を損ねそうなんだよな。
フィンの後をただついていくだけだった俺は、先行している分身で状況を確認する。
……どうやら、中央の道を進んでいけばボスフロアに繋がっているようだ。
分身がボスフロアに入っても反応はしていないので、それ以上の情報も手に入らないので、そこで分身を消滅させた。
「フィン。この中央の道で間違いなさそうだ」
「分かったわ。さっさと行きましょう」
フィンがそう言って歩き出す。
思っていたよりも迷宮の規模が小さかったため、まだ余裕はあったが、フィンは休むことはしない。
「大丈夫か? まだ迷宮の消滅まで時間はあると思うけど」
「……そうね。でも、さっさとしないと……外の人たちが不安になるでしょ?」
複雑そうな表情とともにそう言って、ぷいっと視線を前に向ける。
確かに、力を持たない人間からすれば魔物や迷宮といった脅威に抱く負の感情は大きい。
俺も、前世はそちら側の人間だったからその気持ちはよく分かる。
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