第104話
外の人たちのために、少しでも早く攻略させたいと思うフィンは、
「……優しいんだな」
俺に対してはあんな感じだが、優しい心もあるんだな。
素直な俺の感想に、フィンは驚いたようにこちらを見てくる。その顔は恥ずかしさからか、僅かに紅潮している。
「べ、別にそういう理由じゃないわよ! そ、その……あれよ! あたしは、自分の評価を上げるためにやってんの! 早く攻略したほうが、冒険者としての評価も上がるでしょ!?」
「ほんとか?」
「ほ、ほんとよ……っ! なによ、その余裕ぶった顔は……っ、ムカつくぅー!」
フィンがぷんすか怒りだしたが、俺はそれ以上は追及はしなかった。
中央の通路へと入ると、雰囲気が変化したのが分かった。
それを証明するように、出現したウルフの数は……五体。
さらにいえば、額に埋められた魔石の数も二つへと増えていた。
……さすがに、これは俺も手を貸したほうがいいだろう。
すでにフィンは集中状態に入っており、下手に声をかけるのはそれを妨げるだろう。
侍の職業は確かに一撃が強力だが、その職業の特性を仲間が理解していることが大切だ。
ウルフたちが動きだすより先に、フィンが地面を蹴って一体を仕留める。
そこで、ウルフたちは怒りを示すように遠吠えを上げ、こちらを睨みつけてくる。
再び集中状態に入ろうとするフィンだったが、そちらへウルフが迫り、フィンの動きを邪魔していく。
「……ッ! こいつら、さっきよりも速いわね!」
確かに、そうだな。
今の荷物を持った状態の俺では相手をするのに苦労しそうな速度だ。
魔石の数が増えれば、それだけ能力も強化される、ということか?
それとも単純に迷宮の奥地に来たからだろうか?
そんな分析をしながら、俺は【誘い+】を発動する。
ウルフたちがフィンから俺に標的を変え、跳びかかってくる。
「フィン。俺が敵の注意を集めるから、その間にまとめて仕留めてくれ」
「あんた大丈夫なの!?」
フィンへの返事は、跳びかかってきたウルフに対しての蹴りで示す。
仕留めるまではいかなかったが、ウルフはかなりの痛手を負ったようだ。
ウルフたちは警戒するようにこちらを睨みつけてきて、その隙にフィンが再び集中状態へと入る
さて……やるか。
俺は荷物を背負ったまま剣を抜き、跳びかかってくるウルフの攻撃をかわしていく。
反撃に剣を振ってみるが、かわされる。かなり速いな。
まだ【劣勢強化・魔力】を二つつけたままなので、多少俺のステータスが低いとはいえ、とてもじゃないがBランク迷宮の魔物ではない。
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