第49話




 確実に、体力が精神が削られていく。

 すでに、疲労によって、俺とスケルトンナイトの力関係は完全に逆転している。

 俺は、どうにか連撃を喰らわないように、回避に専念して何とか時間を稼いでいるところだった。


 ……戦いが始まって十分近くが経ったか?

 ほとんど休めていないまま、動き続ければどれだけ鍛えていても限界が近づいてくる。


「ガアア!」


 スケルトンナイトの雄たけびとともに振りぬかれた一撃を受けきれない。

 弾き飛ばされた俺は受け身もとれず地面を転がる。

 休んでいる暇はない。


 ポーションを使って回復し、すぐに立ち上がる。

 迫ってきたスケルトンナイトへと剣を振りぬいたが、攻撃は空を切る。

 スケルトンナイトはにやりと口角を吊り上げた。


 それが見えた次の瞬間には、俺の体は空を舞っていた。

 地面を転がりながら、HPを確認する。HPはさっきから削られっぱなしだ。

 ポーションを使ってスケルトンナイトを見据えるが、視界がかすむ。


 地面を蹴りつけ、スケルトンナイトへと接近する途中で剣を思い切り投げつける。

 俺の攻撃はヤケクソのように映っただろう。

 しかし、これまで通りに攻撃していては、じわじわと削られるだけだ。


 だから、何か新しい攻撃をと思っての行動だった。

 必死の思いで投げつけた剣はあっさりと弾かれる。

 俺は一瞬怯んでしまったが、すぐにハンマーを取り出して振りぬいた。

 

 大振りの一撃は、隙だらけだった。

 あっさりとかわされてしまう。

 そのまま、反動を利用するようにハンマーを投げたが、スケルトンナイトはあっさりとかわし、俺の体を蹴りつけてくる。


 軽い蹴りだったにも関わらず、俺は耐えることができなかった。

 情けなく、地面を転がる。


「……」


 スケルトンナイトは、じっとこちらを見据え、口元を歪ませる。

 ……勝利を確認したかのような、その笑みが憎たらしくて、たまらない。

 あとちょっと、あとちょっとだったのに。


 何かきっかけがあれば、勝てたのに。

 悔しい、悔しい……! 俺は何も、変えることができなかった……っ。

 振り上げられる長剣を眺め、俺はどうしようもない自分への不甲斐なさを必死に必死に――演技した。


 スケルトンナイトの長剣が振り下ろされ、俺はそれを転がってかわす。

 体力がほとんど残っていないのは、本当だ。

 だが、こいつを仕留めるためだけの体力は、残してある。


 驚いた様子のスケルトンナイトへ、俺は笑みをぶつける。


「やっと、油断してくれたな」

「……っ!」


 俺の言葉に、スケルトンナイトの様子がわずかに変化した。

 警戒するように視線が俺を捉え、持っていた長剣を振り下ろしてくる。

 俺はその一撃に集中し――振り下ろされた一撃を両手の平で挟むように止めた。

 

 白刃取り、という技術だ

 

 俺も詳しくはないが、そういう技術があるのは知識として持っていた。

 だが、もちろん、うまくはいかない。完全に掴んだと思ったが、刃は僅かに手の平へと食い込み、鋭い痛みが伝わってきた。

 衝撃だって、殺し切れていない。

 

 そのままでは体を両断されかねなかったので、俺は即座に力の方向を変えるように弾いた。

 白刃取り、もどきではあったが、窮地を凌ぐことはできた。

 スケルトンナイトの体がよろめき、完全なる隙を作り出すことに成功した俺は、影を操作して、ごうてつハンマーを掴み、振り下ろした。

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