第45話
「ガアア!」
一体どこから声を出しているのだろうかと疑問はあったが、男らしい声とともにスケルトンナイトはこちらへと突っ込んでくる。
「それじゃあな、荷物持ち共! あとで魔結晶は回収させてもらうよ!」
ベヨングの叫び声と、冒険者たちの下卑た笑い声が響き、ボスフロアの入り口を巨大な土の壁が覆いつくした。
天井までびっしりと土の壁を盛り上げたのは、たいそうな技術だなぁ……なんて思いながら、俺は迫ってきたスケルトンナイトへと視線を向けた。
「れ、レウニスさん! 私たちが逃げる前に入り口が塞がってしまいましたよ! 私たちが逃げそびれていることを忘れてしまっているのでしょうか!?」
オルエッタの抜けた回答に、緊張の糸が緩んでしまう。
だが、オルエッタの隣にいた、キューダの厳しい表情から……現実が最悪な状況であることを理解する。
……俺たちは、Cランク相当はあるだろうボスフロアに、閉じ込められた。
入り口に向かい、あの土の壁を殴りつければ無理やり脱出はできるかもしれない。
しかし、その場合はベヨングたちがきっと待ち構えているだろう。
そこを突破するのも、厄介だ。
どちらにせよ厄介なら、まずはあのスケルトンナイトを仕留める必要がある。
……遠目に見ていた時とは違い、こうして対面すると嫌でも分かる。
このスケルトンナイトと俺には、大きな実力の差がある。
いざ、自分に敵意を向けられると、その威圧感に絶望さえも感じてしまいそうになる。
「……あいつらの目的は俺たちを殺すことなんだろうな」
「え、ええ!? どうしてそんな酷いことをするのですか!?」
「魔結晶の山分けが、七人になるんだ。お金が少し増えて嬉しいだろ?」
「確かにそれはとても嬉しいですね! って、でも酷いですよ! 私たちを殺してまでお金を手に入れようとするなんて!」
「……そうだな」
ひとまず、無駄話はここまでだ。
俺は背負っていた鞄をおろし、そのポケットに入れていたスキルストーンを取り出して、スキルを獲得する。
【劣勢強化・速度】だ。
これにより、俺の速度は1.5倍となり、700近い数値になった。
準備は整った。
こちらへと迫ってきたスケルトンナイトが、長剣を振り下ろしてきて、それを俺は受け止める。
力は……ほぼ互角だ。
【劣勢強化・力】があって、この状態だ。もしも、街でこのスキルを獲得できていなかったら今頃俺はここで死んでいただろう。
スケルトンナイトの攻撃を弾き、その体を蹴り飛ばした。
「オルエッタ、キューダ。二人とも、少し下がっていてくれ」
「れ、レウニスさん。何とかなるんですか!?」
「……分からない、けど。まあ、何とかしないとな」
このまま、スケルトンナイトに殺されてしまえば、ベヨングたちの思うつぼだ。
それだけは、絶対に阻止してやる。
以前のように、二人が死ぬ姿は見ていないが、それでも恐らく正史の時間では二人は死んでいるはずだ。
そんなくだらない未来は、俺が変えてやる。
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