第26話
「い、イソルベ! やべぇ、HPが削られてステータスが使えねぇ!」
「ああ!? てめぇ、何をやってんだよ!」
おっ、一人のHPが削られてしまったようだ。
HPが0になれば、ステータスの恩恵は受けられないため、単純に戦力が一人分なくなったようなものだ。
イソルベは額の汗を拭いながら剣を振りぬき、ゴブリンを仕留めていく。
こちらが一人減ったこともあってか、くしくも連携がなされるようになる。
お互いの隙を庇いあうようにして戦い、どうにかゴブリンを退けることに成功した。
戦闘が終わったところで、攻略班の人々はその場で膝をついた。
さすがに、そろそろ限界だろう。
俺は彼らへと近づき、イソルベに声をかけた。
「イソルベさん。ちょっといいですか?」
「……ああ?」
「さすがに、HPを失った人がいる状態でこれ以上進むのは難しいと思いますし、すぐ近くで一度休みを挟みませんか? 万全の状態でないと危険もありますし」
「さっき言っただろ? さっさと攻略しないとオレの評価に響くだろ」
「ですが、先ほどの戦闘でもかなり苦戦しました。ここから先はゴブリンの数も増えていきますし……もしもそれで全滅、あるいは怪我人が出てしまったら、大手クランからの評価も下がると思いますが」
「……ちっ、荷物持ちはいいよな! ついてくるだけなんだからよぉ! すぐに休憩の準備を始めろ!」
イソルベは吐き捨てるように叫んだ。
俺の提案に、攻略班の人々は別段反対を示すことはなかった。
さすがに、皆も限界が近かったんだろうな。
俺はルファンとミーナとともにすぐに結界魔石の準備を行う。
結界が展開され、ちょうど近くにゴブリンが出現する。
しかし、こちらに気づいたゴブリンたちは結界魔石から放たれる魔力に露骨に顔を顰め、離れていった。
しばらく離れると、彼らは再び迷宮内へと吸収されるように消えていった。
「んじゃ、オレたちは先に寝てるからな。荷物持ちたちで見張りしてろよ」
「分かりました」
イソルベは一方的に言い放ち、近くで横になった。
他の攻略班たちも揃って横になり、目を閉じる。
……一応、見張りには戦える人間を一人用意しておくものなんだけどな。
結界魔石だって、99.9パーセント安全だが100パーセントではない。
もしものときのために、攻略班のうちだれかが見張りを務めるのが普通だ。
だからか、ルファンが何か言いたそうだったが、俺と目が合ったことで口をつぐんだ。
やがて、寝息やいびきが聞こえてくる。この状況でもすぐに眠れたのは、彼らがそれなりに疲労していたからだろう。
「それじゃあ、ルファンとミーナも少し休んでおくといい」
「え? いやいや、先にレウニスさんたちが休んでください。私が見ていますから!」
「いや、俺ちょっとトレーニングしたいんだ」
「へ……? トレーニングですか?」
「ああ。日課の筋トレをまだしてないからさ」
朝はしたけど、夜はしてないからな。
俺がそういうと、ルファンとミーナは顔を見合わせ、ひきつった笑みを浮かべている。
なぜそのような顔になったのかは分からないが、俺は再度口を開いた。
「そういうわけだから、先に二人とも休んでおいてくれ」
「分かった。休みたくなったらいつでも起こしていいからね」
ミーナの言葉に頷いた後、俺は筋トレを開始した。
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