第8話


 冒険者ギルドに到着した俺は、早速冒険者登録を行うための列へと向かったのだが。


 凄い人だな……。

 目の前には行列ができており、手の空いているギルド職員が列の整理をしているほどだった。

 その最後尾につき、俺は列が進んでいくのを見守る他ない。


 成人の儀は一週間の間行われる。

 起動に大量の魔力を消費するが、一度起動すれば一週間の間はつきっぱなしだからだ。

 この時期は冒険者登録も増えるため、まあ行列もしばしば。

 

 ここで焦っても仕方ないので、気長に待とう。


 登録自体は、能力証明書があればすぐにできるため、それほど長く待たされることはないだろう。

 実際、列はスムーズに進んでいく。

 三十分ほど待てば、俺の番となった。


「いらっしゃいませ。冒険者登録でよろしいでしょうか?」

「ああ。頼む」

「それでは、能力証明書の提出をお願いいたします」


 言われるがままに能力証明書を提出すると、ギルド職員は僅かに顔を顰めた。

 俺のステータスが低いからだろう。前世に登録したときは、こんなに混んでいなかったため、職員に色々と質問を受けたものだが、今は忙しいこともあってか特には追及されなかった。

 まあ、身分証明書代わりに登録する人もいるしな。


 きっと俺もそう思われたに違いない。

 前は空いていたこともあり、聞き耳を立てていた冒険者に馬鹿にされたものだが、その心配もない。


 以前は酷かったものだ。

 「あいつ、暗黒騎士だってよ」、「HP2、て。弱すぎんだろ」、「タンク系の職業なのに」などなど。


「はい。それではこれで冒険者登録を終了します。こちら、冒険者カードになりますのでなくさないようにお願いします」


 登録はスムーズに終了した。

 俺は、それからギルドの資料室へと向かう。


 冒険者カードを持っている人なら、誰でも入室可能だ。

 と、いってもそれさえなくても中に入れるくらいにはゆるゆるだ。

 入り口には見張りの人がいたが、特別何かを要求されることもなく、中に入れた。


 ここには、魔物や迷宮に関する情報が保管されている。


 とりあえず、レベル上げのために近場のGランク迷宮を調べるつもりだ。

 いくつかの資料を見ていったが、今は近くに手ごろな迷宮がないな。


 仕方ない。

 王都からは一度離れる必要がありそうだ。


 北の街、ベーグルティの近くにGランク迷宮があるようだな。

 おまけに、迷宮の寿命も近いようだ。そうなれば、迷宮攻略に参加させてもらえるかもしれない。

 ボスモンスターを討伐した場合、多くの経験値がもらえるので、ぜひとも参加したいものだ。


 他にもいくつかGランク迷宮については調べたが、ベーグルティのGランク迷宮がもっとも都合が良さそうだった。

 調べることは終わったので、ギルドを後にして次に向かったのはスキルストーンショップだ。


 職業に関連してのスキル以外、いわゆる汎用スキルは後天的に獲得でき、自分の好きなようにカスタマイズできる。

 また、初めは四つしかスキルは装備できないが、成長次第で増えていくこともあるそうだ。


 今俺が欲しいスキルは、もちろん【根性】だ。

 まだ机上の空論でしかないが、【根性】があれば、俺の立場は一気に変わる。

 ……ただ、問題はそのスキルストーンがこの街にあるかどうかだ。


 図書館に情報があったということは、誰かしらが使用してその情報を記したということになる。

 ……都合よく、見つけられるかどうかだな。大手のクランならば、それなりに管理されているとは思うが、街の一ショップだと中々そこまではされていない。

 この世にはたくさんのスキルがあるため、自分の求めているスキルと出会えるかは運による。

 祈るような気持ちとともに、俺は近くのスキルストーンショップへと踏み込んだ。

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