第20話
Sランク冒険者になるために、頑張ってます! なんて言っても、頭のおかしい奴と思われかねない。
「俺もどっちかっていうと、ルファンと同じ感じかな? 小遣い稼ぎ程度で、もしもステータスがめちゃくちゃ上がったら何かするかも、ってくらいだ」
無難な回答だろう。
ルファンが頷きながら柔らかく微笑んだ。
「そうなんだねぇ。まだ若いんだし、何が起こるか分からないし、二人とも頑張ってね」
ルファンの笑みには人柄の良さがよく出ている。
結婚しているといっていたが、この人の性格なら当然だろうな、と思えた。
「あー、私も早く稼げる冒険者になりたいなぁ……。冒険者って稼げる職業なのに成人の儀で大きく二分されるのって酷いよね」
ミーナが同意を求めるような調子で言ってきたので、とりあえず頷いておいた。
冒険者は稼げる、か。
実際のところ、冒険者はかなり厳しい職業だ。
あくまで稼げるのは、一部の上澄みくらいだ。
それに、稼げる仕事は死の危険とも隣り合わせ。
一瞬にして大怪我を負って一生稼げなくなる可能性もあるんだしな。
多少の怪我でも、今までと感覚がズレてしまい、そのまま引退することも出てくるらしいし。
ある程度楽に稼げるのなんて、A、Sランク級の冒険者くらいだ。
本当に少数のみに許される華やかな世界。それが冒険者だ。
B、Cランクでもそこそこ稼げる可能性はあるのだが……彼らは自分のランクと同じ難易度の迷宮に挑み続けるというリスクが伴う。
Aランクならば、例えばBランク迷宮にいけば安全だけど、B、Cランクはなかなかそうはいかない。
危険な世界であるが、それらを国が教えることは少ない。だって、迷宮から得られる素材は国の発展に欠かせないものだからだ。
死を恐れて冒険者のなりてが減ってしまえば、国にとっては大損だからな。
ルファンは別に本業を持っていて、あくまで冒険者は副業と言っているように、この世界で安全に暮らすのならそれが一番だと思う。
そもそも、冒険者である程度の実績を残した人は、だいたい迷宮に入るのをやめ、指導者や貴族の私兵になることが多い。
迷宮に入らずとも多少給料は下がったとしても安定した収入と、死との隣合わせの生活からサヨナラしたい人が多いんだと思う。
俺だって、友人の死がなければこの人生でも司書を選んでいたかもしれないしな。少なくとも、ここまでレベル上げに全振りはしていなかっただろう。
「よし、着いたな。おい、荷物持ち! さっさとしろ! もう行くぞ!」
Gランク迷宮に到着したところで、イソルベが声を荒らげた。
俺たちは少し速足になって攻略班と合流し、迷宮へとおりていった。
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