第19話
街を出てしばらくが経った。俺たち荷物持ち班は攻略班の後をついていっていたのだが、一人の男性が俺を見て笑った。
「全員の職業一覧見てたんだけどさ、一人滅茶苦茶弱くねぇか?」
「ああ。レウニスってやつだよな。暗黒騎士なんだってな!」
「それにHPも2で限界値を迎えているって雑魚すぎだろ!」
「本当にな! 十五歳ですでに冒険者人生終了って笑えるよな」
攻略班の人たちはすっかり俺のことで盛り上がっていた。
一応、どんな人たちがいるのかパーティーリーダーにはパーティメンバーの登録されている情報が書かれたものが渡されることになっている。
本来それは人を馬鹿にするために使うのではなく、パーティー運営のために使うものなのだが。
それが原因で、俺のことで話題になってしまっているというわけだ。
荷物持ちは他にもいたけど、二人ともステータスは多少低いが職業は普通だ。目立った部分がないためか、目をつけられることもないのだろう。
前世の俺ならば、イソルベたちに苛立ちも持っていただろうし、なんなら反抗的な態度をとっていたかもしれない。
ただ、今はそれなりに生きてきた経験もあってか、気になることは少ない。
「……酷いね。あそこまで言わなくてもいいのに」
「いや、別に気にしてないから大丈夫だ」
俺を気遣ってか、ミーナがぼそりとそんな風に言ってくれた。イソルベたちの耳に入れば、面倒なことになると分かっている故の小声だ。
人間大なり小なり人を見下してしまうものだ。
自分よりも劣る人をみて、優越感に浸るということは決して誤った行為ではないし、人間というか生物の基本として備わっているものなんだしな。
それを表に出すか表に出さないかで、人の本質が問われるのだ。
そんなことを、イソルベもいつか成長した時に気づくのではないだろうか。
そんな大人な態度で俺は割りと寛大な気持ちでいると、ルファンが笑みを浮かべた。
「大人だね、レウニスくんは」
「そんなことありません。あんまり他人の評価を気にしないだけですよ」
前世ではめっちゃ気にしてたけどな。
「僕には別に敬語じゃなくていいよ。冒険者同士、自分の話しやすいように話すのが基本だしね」
ルファンがにこりと微笑む。荷物持ち班は、イソルベたちのおかげで良好な関係が築けそうだ。
ルファンが言うように冒険者は敬語などを意識しなくても良いとされている。
その理由は、戦闘中に細かな指示を出さなければいけないからだ。
例えば、普段敬語を使っていない人からすれば、敬語を使うことにばかり意識が向いてしまい、判断が遅れることもあるかもしれない。
そう言った危険を少しでも排除するため、敬語などは意識しなくても良いとされ、その結果、冒険者にはがさつな人が多いという意見もあった。
……まあ、そう言った理由から敬語を使うと、『舐められる』こともあるため、俺も普通の冒険者として敬語はなるべく使うつもりはなかった。
ただし、貴族同士でパーティーを組むとなるとやはり上下関係というものは存在する。
全てのパーティーから敬語をなくすことは不可能というところが真実だ。
攻略班たちから離されないようにしながら、俺たちは自分たちのことを話していく。
「へぇ、ルファンさんは小遣い稼ぎみたいな感じで参加してるんだ」
「うんまあね。この前子どもも生まれて色々とお金が必要でね。ミーナさんはどうなの?」
「私はレベル上げの一環かな? 職業は良かったけどステータスが低いから……今は荷物持ちでレベル上げをしたほうがいいかなって思ってね」
「あはは、そうなんだ。冒険者生活、頑張ってね」
「うん、ありがとう。レウニスさんはどうなの?」
話題は俺へと向けられる。
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