第82話



 一応、クランの最低条件として、六名以上の冒険者が所属している必要がある。

 クランを維持するためには、クランランクや所属人数に応じたの支払いもあるため、実はクランというのは簡単には名乗れないのだ。


 ただ、正式に認可されれば、ギルドから優先的に依頼を発注されたり、国や貴族から依頼が来ることもあるため、クランを造るメリットはそれなりにある。


「それで、オルエッタはどうしたいんだ?」

「……お母さん、お父さんから引き継いだクランをなくしたくないんです……! お姉ちゃんの体調が治るまで、私がかわりにクランを維持するために依頼とか頑張りたいんです……っ!」

「……そうか」


 だから、最初の謝罪に繋がるんだな。

 そう思っていると、オルエッタが深く頭を下げてきた。


「だから、ごめんなさい……! 落ち着くまで、パーティーを離れてもいいですか!? レウニスさんから受けた恩は忘れていませんし、レウニスさんが力を必要だというときには必ず戻りますから!」


 断る理由はない。

 オルエッタの熱意に、俺は首を縦に振った。


「ああ、分かった。そもそも、俺としてもオルエッタにはかなり助けられたんだ。……まあ、その、頑張れよ」


 彼女がいなければここまで最高率でレベル上げはできていなかった。

 ……オルエッタに出会えなかったとしても、別の占い師の職業を持った人を探してはいたと思うが、だとしてもここまで効率が良かったかどうかは疑問だ。


 彼女が俺を信じてくれ、その無邪気さと真面目さでついてきてくれたおかげだ。


 だから、お礼を伝えたのだが、オルエッタは首を横にぶんぶんと振った。


「そんな! 私なんて何もしていませんよっ。全部レウニスさんのおかげなんですから……ありがとうございます。必ずまた戻りますから……ちょっとの間ご迷惑をおかけしてしまい、ごめんなさい!」


 ぺこりと頭を下げてきたオルエッタに俺は僅かながらの寂しさを覚えていた。

 オルエッタの負担にならないようにと、さっぱりとお別れを伝えたが、それでも数か月共に過ごしてきた仲間との別れに何も感じないほどではない。


 一人になってしまったな。

 どちらにせよ、次の能力測定までの時間はあまりない。

 

 金はすでに十分溜まっているのだから、ここからやることは迷宮をひたすら攻略して、決戦に向けての準備をするくらいだ。

 オルエッタがいなくとも金もなんとかなる、はずだ。


 そんなことを考えながら、オルエッタとの最後の夕食を行った。

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