第11話



 眼前まで持ち上げ、【根性】のスキルであることを確認した俺は頬ずりをする。

 やった! このスキルが俺の想定通りに機能すれば、俺のHP問題は解決するはずだ!

 そんなことを考えていると、店員が苦笑していた。


「お客さん。そんなにそのスキルが欲しかったのかい?」

「あ、ああ! これ十万ゴールドだよな!?」

「おう、そうだ。まあ、冒険者やるんだろ? 頑張りなよ」


 苦笑しながらの店員に十万ゴールドを手渡し、俺は店を出た。

 俺は薄暗くなってきた空を見上げながら、スキルストーンを確認する。


 本当に、【根性】のスキルストーンだ……っ。

 まさか、これほど早くにこのスキルが獲得できるとは思っていなかった。

 正直、しばらくは攻撃を受けないように細心の注意を払いながらのレベル上げをする必要があると思っていたからな。


 スキルの獲得方法は簡単だ。

 スキルストーンを自分の胸元に当てることで体内に吸収される。

 そして、ステータスを確認する。


 レウニス レベル1 職業:暗黒騎士

 HP2/2(限界値) MP150/150 力106 体力107 魔力108 速度105 

 職業スキル【暗黒騎士:レベル0】【暗黒魔法:レベル0】【暗黒騎士強化:レベル0】

 スキル【根性】【】【】【】

 装備【】【】【】【】


 これで、スキルの獲得は終了だ。解除する場合は、該当するスキルを念じながら胸に手を当てればスキルストーンを取り出せる。

 【根性】が手に入ったのは嬉しいが、もう暗くなってしまった。

 

 今日はここまでだな。

 ひとまずは安い宿で一夜を過ごし、明日の朝にでも北の街ベーグルティへと向かおう。




 ステータスを鍛える手段は、レベル上げだけではない。

 むしろ、日々の基礎鍛錬がもっとも重要ともいえる。


 それを知ったのも、前世で十年程経ったときだった。

 毎日自分に適した鍛錬を積むことで、ステータスの上昇が見込めるのだ。


 朝。まだ陽が昇り始めるような時間に宿を出た俺は、外で走りこんでいた。

 ランニングにより、体力の強化が見込める。同時に、魔力を強化することも忘れない。

 自分のMPを確認し、それをいつでも使用できるように意識を強める。アクティブスキルがあれば、それを実際に使用することで簡単に魔力を強化できるが、あいにくスキルを購入できるほどの金はない。


 まだ、職業スキルも獲得できていないしな。職業スキルはレベルアップで手に入るスキルポイントを割り振ることで、新たなスキルを獲得できる。

 とにもかくにも、早い所レベルを上げる必要があるのだが、今は基礎鍛錬だ。


 ランニングの後は、走り込みだ。先ほどのランニングは長距離を一定の速度で走るものだが、走り込みは短い距離を一気に走るものだ。

 これにより、体力、力、速度の強化が見込める。


 それを終えた後は腕立て、腹筋、背筋、スクワットなど、できる限りのトレーニングを行った。

 休みながらおおよそ一時間ほど訓練を行ったところで、ステータスを確認する。


 力+4、体力+7、魔力+7、速度+5か。

 まだ、ステータス自体が低いこともあり、かなり上昇率は良いな。

 ステータスもレベルも、上がれば上がるだけ上がりにくくなっていく。


 一般的に、ステータスで平均500程度あると、Dランク冒険者と呼ばれるのだが、その域に到達できる冒険者はかなりいるそうだ。


 そこから先は才能の世界と言われている。とりあえず、500くらいまでは順調に育っていくだろうけど、そこから先上がるかどうか……。

 ちなみに、国内にいる数少ないSランク冒険者は平均で1000近くあるのだとか。


 一応、俺の場合パッシブスキルで強化する予定なので、もう少し目標の数値は低くなると思うが、それでもどこまで基礎ステータスを伸ばせるか。


 とはいえ、俺にとって基礎鍛錬は苦ではない。

 この筋肉を痛めつけている感覚がたまらないのだ。


 今日の筋肉もいい感じに悲鳴を上げているのが分かる。


 大量の汗をかいた俺は、宿の店員に頼み、お湯をもらって体を軽く洗った。

 朝食と昼食の弁当を用意した後、近くの店でポーションと安い剣を購入し、ベーグルティ行きの馬車に乗りこんだ。


 


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