第94話


 彼は二名の冒険者とともに、慌てた様子でこちらへと視線を向けてきた。


「そ、そうだ。覚えていてくれてありがとう。それで、急で悪いんだけど、手を貸してほしいんだ」

「……手を? 何があったんだ?」

「街近くで発生したBランク迷宮が発生したんだ。ただ、これが厄介でね」

「……厄介?」

「迷宮の寿命が……あと十時間ほどなんだ。……失敗すれば、迷宮爆発によって魔物たちが外にあふれ出してしまうかもしれない。すぐにでもボスモンスターの討伐をする必要があるんだ」

「……なんだと?」


 ルーベルクの驚きの声に、奥にいたフィールとオルエッタも姿を見せてきた。



 俺たちは玄関入ってすぐにあるリビングに置かれたテーブルにて、

 受付のように使われているため、椅子は向かい合って二つしかなかったので、フィールとルーベルクが向かいあうように座っていた。

 ルーベルクは『ハンターブロー』の冒険者なこともあり、フィールは緊張した面持ちだ。


「それで……えーと、何から話を聞けば」

「先ほど簡単には話しましたが、Bランク迷宮が出現しまして、ボスモンスターの討伐を行う必要があるんだ」

「……そうね。それを、レウニスにお願いしたい、ってことね?」

「……まあね」


 ルーベルクがちらと俺を見てくる。

 フィールの視線も俺に向けられたまま、動かない。

 クランリーダーではあるが、立場的には俺のほうが上と思っているのかもしれない。


「俺は別に構わないが、あくまで『仮面の英雄』に依頼を出してもらえば、俺がそれを引き受けるってことでいいか?」

「それは……もちろんだ」

「それと、オルエッタも連れて行っていいか?」

「構わないよ。君の望むパーティー編成で構わない。それと、これは協力をお願いすると初めにも行ったけど……他にも冒険者はいるんだ」

「他にも?」

「ああ。ちょうど街にいたうちの子たちに攻略をお願いする予定なんだ。みんなBランク以上の冒険者だから実力的に足を引っ張ることはないと思う」


 ルーベルクの言葉は、何かを隠すような感じだ。

 まるで、実力以外に問題があるかのような言い方だが、まあ冒険者には問題がある人たちが多いからな……。


「それなら、俺たちに依頼する必要はないんじゃないか?」

「……まだまだみんな若いからね。用意できた戦力は四名だけだから、緊急での対応するのは大変だと思ってね」

「それは俺たちも変わらないと思うが……」

「だが、キミは……すでにAランク迷宮も攻略しているだろう? 僕の用意した冒険者たちはBランク迷宮までしか攻略したことがないからね」

「知っていたのか」

「……まあ、ね。警戒させないためにいうけど、実はレウニスくんのことはずっとスカウトしたいと思っていてね。上の方針と合わないからスカウトできずにいたけど、ずっとレウニスくんのことは調べてもらっていたんだよ」


 何度かつけられているな、と思ったことはあったが悪意は感じられなかったので放置していたが、ルーベルクたちだったんだな。

 つけられている、といっても特別何か悪影響があったわけではないし、むしろ、Sランククランにそこまで評価されているのは悪い気はしなかった。

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