第108話



「俺の名前は、レウニスだ。あんたはリガルでいいんだな?」


 言葉が通じるかは分からない。

 問いかけた言葉に応じるかのように、リガルは刀を鞘へと戻し、フィンと同じように構える。


 ……相手の戦い方は、恐らく侍と同じようなものだろう。

 ならば、集中させる時間を与えてはいけない。

 俺はすぐに地面を蹴りつけ、リガルへと距離を詰める。

 

 振りぬいた右の剣を、リガルはさっと横に動いてかわす。

 動きの先に合わせ、左の剣を振りぬき、連撃を放っていく。

 リガルは俺の攻撃をかわすのに専念しながら、時々刀を出して受け止めていく。

 

 同時に反撃をするように刀を力強く振りぬいてくるが、俺はそれに合わせ両手の剣をぶつける。

 顔を突き合わせるかのような距離での力のぶつけあい。

 思い切り力を入れ、リガルを弾き飛ばす。

 

 速度、力はほぼ互角だ。

 リガルは地面を何度か踏むようにして体勢を直し、俺はそこへ追撃するように剣を突き出す。

 かわされる。刀が襲い掛かるが、それを左の剣で受け止める。


 力をそらすように受け流し、反撃に剣を振りぬくと、リガルに腹を蹴りつけられる。

 刀と体術の使い方がうまいな。

 

 体勢を立て直すと、眼前にリガルが迫っていた。

 居合の状態から刀を振りぬかれる。

 それを両手の剣で受け止める。だが、先ほどよりも力が強い。


 ……一瞬ではあったが、集中状態になっていたのだろう。

 力で押し返すのは無理だと判断した俺は、弾かれるのを選択する。

 だが、今度はさっきよりも体勢が悪い。迫るリガルから時間を稼ぐために、【シャドーアバター】を召喚する。


「……」


 リガルは冷静に俺の分身を観察する。今召喚した分身たちは魔力補正のない雑魚だ。

 リガルへと襲い掛かる分身たちは、それぞれ自分の体と同じような黒い剣を持って切りかかるが、あっさりと仕留められる。

 

 だが、振りぬいた攻撃のあとに隙はある。跳躍とともに俺は剣を振り下ろし、回避したリガルへと剣を投擲する。

 剣はリガルの頬をかすめ、リガルの眉間がわずかに寄った。

 

 だが、攻撃は終わりではない。俺は【シャドールーラー】で影を操り、投擲した剣をつかんで振り下ろす。

 リガルの背中を切りつける。不意打ちともいえる一撃に、リガルは先ほどよりも明確に体勢を崩す。

 さらに仕掛けようとしたところで、リガルが地面を踏みつけた。

 その衝撃が周囲を揺らし、一瞬体がふらつく。

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