第二章

第1話


 兄との決闘を終えた俺は、その足で『アルケイク』のオークション会場へと向かっていた。

 今回はオークションへの参加が目的ではなく、商品の売却だ。


 それと、うまくコネを作れれば、俺の頼みも聞いてもらえるかもしれないしな。

 俺に残されている時間は多いようで多くはない。

 ここからは、特に効率よく稼いでいかないとならない。


 俺が兄から頂いた装備品は四つだ。


 まず、武器になるが……長剣のブレイクソードというものだ。

 両刃の剣であり、かなり重たい。

 両手で扱うには良いが、片手では使いにくい。

 装備としての性能は、力+30か。


 俺は両手剣を使う予定はないが、ステータス強化のための装備品として持っておくぶんには良いだろう。


 続いては、防具。

 ゴーレムメイルという鎧だ。

 とても派手な装備品であり、積極的には身に着けたくないんだよなぁ。


 兄が身に着けていた姿を思い浮かべながら、装備品の性能を確認していく。

 こちらは体力+30だ。

 体力という点は現在の俺のスキル構成的に微妙だが、数値の補正は中々だ。


 ただ、残り二つのアクセサリが良いんだよな。


 兄から頂いたアクセサリは、スピードネックレスとパワーネックレスだ。

 それぞれ、速度+30、力+30してくれるものだ。

 今の俺のスキル構成ならば、速度と力を1.5倍にできるため、必然的にこの二つのステータスを強化できる装備品は俺との相性が良かった。


 確かにナイトソードと比較すれば、ゴーレムメイルのほうが強化量は大きい。

 ただ、体力は防御力に関係するステータスでもあるので、HP2の俺にはほぼほぼ不要なステータスでもあった。


 だから、ゴーレムメイルは売却でいいだろう。

 ゴーレムメイルは結構良い装備なので、『アルケイク』に持っていったほうが高くつくはずだ。

 

 俺はすぐにオークション会場へと向かう。会場近くについたところで、見覚えののある女性を見つけた。

 以前、俺の兄に対してそれはそれは丁寧な怒号をあげていた人だ。

 あの時の剣幕を思い出すと、声をかけるのに僅かながらの躊躇をしてしまったのだが、


「あれ、あなたは確か……」


 ……気づかれてしまった。

 ここで無視して去る方が悪い印象を与えてしまうので、俺は彼女を刺激しないように意識しながら声をかける。


「昨日はどうも。色々と世話になった」

「やはり、【オートヒール】の方でしたか。昨日はご迷惑をおかけしました」


 女性は綺麗に腰を折りたたんで謝罪した。

 問題を起こしたのは兄なので、この女性からご迷惑をかけられた覚えはないので、首を横に振る。


「いや、俺は別にいいんだ。……あー、その一つ確認したいことがあってな」

「スキルのことでしょうか? 何か、問題がありましたか?」


 どうやら昨日のことで俺が何か確認したいと思っているようだ。


「いや、昨日のことじゃなくてな。……少し相談したいことがあって。俺が持っているこのゴーレムメイルの売却と、他にあるスキルを探しているんだが……それについて詳しい話はできないかと思ってな」


 俺は、体からゴーレムメイルを取り出す。

 ……今は一応装備している。

 だって、装備品は体内にしまえるからな。

 装備せずに運ぼうとすれば、かなりの重量だっただろう。

 手渡すと、女性は目を細めながらゴーレムメイルを観察する。


「こちらは……なかなかの鎧ですね。なるほど、ひとまず話を聞きましょう。中までご案内いたします」


 どうやら取り扱ってくれるようだ。

 女性は近くにいた別のクランの人に声をかけ、仕事を頼んでから俺に視線を向けてきた。

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