第35話
ラーナさんがそんな表情をしていた理由を、俺は前世で聞いていたため、何も言えずにいた。
オルエッタがきょとんと首を傾げる。
「でも、ラーナさんも強かったですっ。レウニスさんがあんなに苦戦したのは初めてみました!」
いや、苦戦は何度もしてるぞ……。
これまでの数々の戦いを思い出していると、ラーナさんは笑顔を浮かべた。
「まあ、でも私がレウニスくんに勝てるチャンスがあったのは今回が最後なんだよね。これからはたぶん、私ボコボコにされちゃうよ」
「え? どういうことですか?」
「私……もう全部のステータスが限界値に達しちゃってね。もっと強くなるっ! って鍛錬しまくってもまったく覚醒しなかったし、どうしようもないんだよね。これから一緒に迷宮攻略していったら、レウニスくんもオルエッタちゃんももっと強くなっていくから……まあ、そういうわけなんだよね」
……そう。
ラーナさんの全ステータスはすでに限界値に到達してしまっている。
確か、オール800前後だったか? 能力的にはランクBの冒険者程の才能だ。
ラーナさんの話を聞いたオルエッタは、少しだけ表情を曇らせた。
「そうなんですか……でも、もしかしたら、今回の迷宮攻略で越えられるかもしれませんし! 一緒に頑張りましょう!」
すぐに笑顔とともに拳を固めたオルエッタに、ラーナさんは申し訳なさそうに頬をかいた。
「はは、確かにあり得ない話じゃないし……そうだね。私も頑張るよ! それじゃあ、またあした」
訓練場の外へと出たところで、ラーナさんが片手をあげ、去っていった。
次の日。
ラーナさんと合流するため、ギルド前へと向かった。
集合予定の時刻より少し早かったが、ラーナさんはすでにいた。
近づいていくとこちらに気づいたラーナさんが気さくに手を挙げる。
「よっ、レウニスくん。今日は一人なの?」
「オルエッタはレベル上げのために迷宮に行ってるからな」
攻略権の競売参加の申請に、俺とオルエッタの二人で行く必要はない。
代表者としてラーナさん。そしてそれに俺が付き添うくらいで十分だ。
「へぇ、迷宮に一人で。……大丈夫なの?」
「ああ。もうずっとやってきてるからな」
「……なるほどねぇ。オルエッタちゃんも強いんだね」
「それなりには、な。たぶん、ラーナさんには勝てないくらいだけど」
そんなやり取りをしながらラーナさんとともにギルドへと入る。
それから、総合受付へと向かう。
受付に座っていたギルド職員は昨日の人と同じで、俺に気づくと会釈をしてきた。
「いらっしゃいませ。本日はどのような御用でしょうか?」
俺の顔とラーナさんを見比べている。ラーナさんは受付のテーブルに肘を置くようにして、落ち着いた声音で答える。
「今度、Cランク迷宮の競売があったよね? それに参加したいんだけど、ここで申請したらいいかな?」
そう言いながら、ラーナさんは冒険者カードを差し出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます