第115話




 疲れた……。

 結局、馬車に乗っていた他の冒険者たちからもサインを求められたり、戦いについて聞かれたり……。


 王都までの旅はそんな感じで時間が過ぎていった。

 王都につけば、俺の情報を持っている人は少ない。少なくとも、顔まではバレていないようなので、堂々と歩くことができた。


 あとは、能力測定の日まで近くの迷宮で最後のレベル上げをするくらいか。




 能力測定の日。

 以前のときと同じようにやはり活気にあふれていた。

 なんでも有名な貴族の子どもも成人をするとかで、その関連の人たちが集まっていたが、やはり一番注目を集めているのは――ラグロフだ。


「レウニス。新聞を見たぞ」


 その注目の存在であるラグロフと俺は、今一緒にいた。

 場所は能力測定が行われる会場にある一室。測定会場が一望できる建物内にいる。


 ここは貴族や一部のクランのみが部屋を借りていて、一般の人は入れないのだが、ラグロフの厚意で俺とオルエッタも入れてもらっていた。


 というのも、俺も能力測定の申し込みをしたのだが、申込数が多く、本来は最終日になってしまっていた。

 だが、ちょうどラグロフに会って、彼の後で良ければ受けられるようになったのだ。

 実は、ラグロフの後は皆気負ってしまって、少し時間が余っていたらしいのだ。

 だから、俺とラグロフはともにいたのだが、彼のお付きの女性であるリアは常に警戒したようすでこちらを見ている。

 嬉しそうに語るラグロフに、俺はため息を返す。


「わざわざ見たのか? あれ、ベーグルティ内でしか発売されてないんだと思ってたぞ?」

「『アバーク』も取り扱っていたからな。父が、スカウトしておけばよかったと後悔していたよ。『仮面の英雄』に入ったのだろう?」


 ……なるほどな。

 『アバーク』が取り扱っていれば、主要な都市ではだいたい新聞を見られる人は知ってしまっているか。

 俺が迷宮の外に出てから影で魔物たちを仕留めたイラストも確かあったので、顔についても知っている人はいるのかもしれない。


 有名になるというのはこういうデメリットもあるんだな。

 ただ、これからのためには、必要なことでもあるが……すべてを終えた後の身の振り方については考える必要があるな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る