第80話
ベーグルティについたのは、昼だった。
もっとも人の出入りが多い時間であり、馬車が街に入るまで結構時間がかかってしまい、くたくただった。
馬車から降りた俺たちは背伸びをして、それからオルエッタを見る。
「そういえば、宿はどうするんだ? クランハウスで寝泊まりするのか?」
「いえ……たぶん、ちょっと話したらまた戻ってくるので、前に泊まった宿を二部屋借りましょう」
「いいのか?」
「はいっ。私の……お姉ちゃんのところにいると、甘えちゃうので。だから、その、強くなるまで戻る予定はないっていう決意みたいなものなんです!」
オルエッタがぐっと拳を固める。
だから、前回もクランハウスで寝泊まりしていなかったんだな。
オルエッタなりに色々と考えているようだし、それ以上の追及はしなかった。
「それなら、俺が前回の宿を二部屋借りておくから、オルエッタはクランハウスに行って来たらどうだ?」
「え? いいんですか?」
「ああ。もしも宿が埋まってて借りれなかったら、ギルドに伝言を残しておくから、ギルドに寄ってくれ」
「分かりました! ありがとうございます! 行ってきますね!」
オルエッタはぺこりと頭を下げてから、上機嫌な足取りでクランハウスがあると思われる方角へと歩き出した。
さて、俺もさっさと用事を済ませようか。
速やかに宿を借りた後、俺は新聞を探しに『アバーク』が運営している店へと向かう。
中に入ると、結構人がいた。
どうしたのだろうか?
近くにいた冒険者たちの会話に聞き耳を立てていると、すぐに理由が分かった。
「もうすぐだよな?」
「ああ! 能力測定の日付があとちょっとで分かるらしいぜ!」
……なるほどな。
ここにいる人たちはそれを楽しみにしているようだ。
見てみれば、確かに若い子たちも多い。
基本的に能力測定は十五歳を過ぎなければならないので、人によってはとても気になる情報だろう。
一か月前に誕生日を迎えているのに、今だステータスが分からないなんて場合もあるからな。
しばらく様々な新聞記事を読んでいく。
へぇ、ラグロフの奴色々と記事にされてるな。
先日、Aランク迷宮の攻略を達成したらしい。ラグロフにより自己申告ではあるが、ステータスはオール950を超えたそうだ。
レベルは現在26だそうで……俺なんかとはステータスの伸び方が違いすぎるな。
記事を見てみると、ラグロフはその容姿もあってかかなりの人気者になっているようだ。
若い女性たちからの一言コメントのようなものがいくつもあって、ラグロフの人気の高さが伺える。
今は彼の妻になる人についても色々と予想されていて、『飛竜の爪』に最近入ったSランク冒険者の女性などがその候補として注目されているようだ。
『飛竜の爪』のSランク冒険者、か。
そちらに関する記事もあり、美しい女性が描かれている。
……まあ、あくまで絵なので多少は美化されているんだろうなとは思う。
ラグロフだって、なんか本人より三割増しにかっこよかったしな。
あまり冒険者たちの情報は仕入れていなかったので、ここ一ヵ月分くらいの記事を読んでいるだけでも随分と楽しいな。
次の記事を閲覧しようとしたときだった。
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