第12話


 Cランク迷宮に到着した俺たちは魔物を探していく。

 この迷宮の構造は草原のようになっていて、かなり広々としている。


 王都近くに最近出現したこのCランク迷宮の寿命は、残り十日ほどまで迫っているのだとか。


 迷宮攻略の権利についての競売も近々行われる予定なので、もうすぐレベル上げを行うのも難しくなるだろう。


 一週間の間、俺たちはCランク迷宮に入りレベル上げを行っていたので、この迷宮の魔物を相手するのに問題がないことは分かっている。

 普通に戦えばまず負けることはない。ただ、今回は【女帝の威光】を使っての戦闘だからな。


 多少の不安を抱えながら迷宮を徘徊していると、オーガが出現した。

 オーガは人型の魔物であり、屈強な肉体を持つ魔物だ。

 見た目は人間のようだが、額には鋭い角が伸び、また顔は凶悪そのものだ。


「オルエッタ。【女帝の威光】を使用してみてくれ」

「分かりました!」


 オーガがこちらに気づき、持っていた棍棒でもう片方の手を叩いている。

 こちらの出方を伺っているのか、攻撃してくることはない。


 その隙に、オルエッタがスキルを発動する。

 オーガの体を淡い光が包むと、それは真っ黒なものへと変わった。


 失敗だ。

 こうなると、魔石はドロップしなくなり、魔物も強くなり、基本的に稼ぎがなくなる。

 メリットよりもデメリットのほうが大きいスキルではあるが、そのくらいのデメリットは許容しないとな。


「い、今のは成功でしょうか!?」

「いや、成功した場合は一瞬白色に光り、失敗の場合は黒く光るんだ」

「そ、そうなんですか……すみません」

「いや、気にしなくていいから」


 そう返事を返していると、苛立った様子のオーガがこちらへと襲いかかってきた。

 【女帝の威光】は、相手の敵意も集めやすい。

 完全にオルエッタへ狙いを定めていたオーガへ、俺は【誘い】を発動する。


 オルエッタへと向けられていた敵意のすべてが、俺へと集まったのか、オーガの視線が俺に向いた。


「ガアア!」


 その怒りのこもった棍棒が振り下ろされる。

 【女帝の威光】によって、オーガのレベルが上がったのは確かで、今まで以上の速度だ。


 しかし、今の俺のスキル構成なら、動きには問題なく対応できた。

 攻撃をかわしながら、隙を伺う。


 攻撃は一度も当たらない。こうなると、【オートヒール】も別になくてもいいんだよな。


 【オートヒール】を使う必要がない場合は、よりステータスを強化できる。

 相手が格下の場合は、【劣勢強化・力】などをつけてみるのもいいよな。


 ……早速、試してみようか。

 思った以上に余裕があったため、攻撃をかわしながらスキルの入れ替えを行う。

 【オートヒール】と【劣勢強化・力】の入れ替えだ。


 【劣勢強化・力】をセットした俺は、1.5倍と1.5倍をかけた合計2.25倍の力でオーガの体へナイトソードを振りぬいた。


 オーガの肉体へと剣が食い込むが、骨と筋肉によって阻まれる。

 それを俺は、力でごり押しする。


「ギィ!?」


 オーガの悲鳴が耳に届いた瞬間、俺は剣を振りぬいた。

 肉も骨も、すべてを吹き飛ばすように振りぬき、オーガの体は真っ二つとなった。


「……ふう」


 かなり、無茶苦茶な戦い方をしてしまったが、それを実現できるだけのステータスなんだよな。

 【劣勢強化・力】と【劣勢強化・速度】、

 どちらをつけるかはその迷宮に合わせて切り替えるのも悪くないな。

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