第71話




 庭に出たところで、俺たちは少し離れて、睨み合う。

 まさか、決闘を申し込まれるとは思っていなかったが、勝利すれば俺は装備とスキルを手に入れられる。


 俺としては、金と装備が手に入るので嬉しい限りだ。 

 使わないスキルや装備は、最悪売ってしまえばいいからな。


 向かいあう兄は、装備を取り出していく。

 長剣と重厚そうな鎧だ。顔が見えるタイプの兜を身に着けていたが、それでもほとんどその全身を守るような装備たちだ。


 兄の職業は重戦士。


 強力な一撃を繰り出すタイプの職業であり、ボスモンスターの攻略ではタンクと連携し、敵に注目されないようにして戦う職業だ。


 確か、ステータス的にはCランク冒険者ほどの評価だったか?

 今の俺のステータスなら、十分に勝ちを拾えるだろう。


 準備が整ったのだろう。

 兄は鞘から剣を抜き、不敵に微笑む。

 俺も【オートヒール】を発動し、向かい合う。


「……そ、それでは決闘の方を始めます。勝利条件は相手のHPを0にすることです。それでは……決闘を始めてください!」


 審判の宣言と同時に、兄が地面を蹴りつけた。

 その踏みつけだけで、力強さは十分に伝わってくる。


「ぶっ潰してやるよ!!」


 兄は両手に持った長剣を振りかぶり、俺へと迫る。

 風圧とともに迫ってきた兄の一撃を、俺は剣で受け止める。

 両腕にかかる負荷は、骨が折れたのではないかと思うほどだった。

 

 兄は、何かのスキルも発動しているようで、俺は勢いに負けて弾かれる。

 HPは減っていないが、それでも正面から受け続けるのは無謀と言うほかないだろう。


 弾かれた俺は、地面を何度か蹴るようにして、体勢を戻す。

 顔を前に向けると、すでに兄が迫っていた。


「【ラッシュブレイド】!」


 兄が叫んだ瞬間、その動きが加速する。

 同時に、剣が振り下ろされる。

 一撃を弾いたのだが、すぐに続いての攻撃が右腕を掠めた。

 HPは即座に【オートヒール】で回復できた。


 しかし、斬られた場所はじんわりとした熱を帯びていた。

 【オートヒール】で回復したとはいえ、斬られた瞬間の痛みは残っている。

 兄から距離をとると、彼は紙をかきあげ、馬鹿にしたように笑う。


「おいおい、この程度かよ? なのに、オークション会場でわざわざスキルを買うなんて、金がもったいねぇな」


 ……安い挑発だ。それに乗るつもりはなく、俺はナイトソードを構える。

 兄はそんな俺を見て、苛立ったようだ。


「生意気な目をしやがって……っ! とことんいたぶってやるよ!」


 兄は再度剣を構えなおし、スキルを口にする。


「【パワーモード】!」


 口にしたスキルは力を強化するスキルだったか。

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