第22話


 この馬鹿……!

 だいたいの冒険者なら、ギルド、競売と聞けば迷宮の攻略権の購入という話に繋がるだろう。


 となれば、金を持っている冒険者なのでは? という疑問が浮かぶはずだ。

 まあ、俺もオルエッタもCランク冒険者程度の実力はあるので、よほど面倒な奴に絡まれなければ退けることはできるだろうが。


「あれ? レウニスさんどうしました?」


 きょとんとした顔のオルエッタに俺はため息を返す。


「あんまりそういう話はしないようにな? 金持ってるのバレたら面倒になるだろ?」

「あっ、そうなんですね。ごめんなさい」


 俺の話を聞いてぺこりと頭を下げてきたオルエッタは、それからちょっとしたり顔を浮かべる。

 未だ、頬に米粒はついたままなので、雰囲気的にはかなり間抜けだ。


「それでは、例の件の話をしにいく、ってことでいいんですよね?」

「まあ、それはそうなんだが、妙に楽しそうだな」

「なんだか例の件で、とかってこう、秘密の話をしている感じがして、とてもかっこよくて……かっこいいですよね!」


 その発言がとても馬鹿らしく聞こえるが。

 そうこうしていると、オルエッタのもとにお代わりが運ばれてくる。


「はい、特盛りごはんだよ」

「わぁ! ありがとうございます!」


 満面の笑顔とともに、ごはんを食べ始めるオルエッタ。

 本当、体のどこにそんなに入るのだろうか?

 そんなことを考えていると、オルエッタは口を開いた。


「そういえば、迷宮の競売って、結局何が目的なんでしたっけ?」


 おい、結局例の件、って言い方はしないのかい。

 オルエッタにツッコんでいると、話が進まないので俺は無視するぞ。


「高ランクの迷宮はボスのドロップアイテムが確定だし、ボスモンスターの経験値も高い。俺の目的はもちろん、経験値だ」


 まあ、高ランクの迷宮でもハズレの迷宮もあるんだが。

 オルエッタには、余計なことを伝えはしない。話がややこしくなるから。


「高いってどのくらいですか?」

「基本的には数レベルは上がるそうだ」


 これは完全に聞いた話だ。

 前世の俺はとてもじゃないがそんな高ランクの迷宮に挑戦できる才能はなかったからな。


 とはいえ、ほとんどの冒険者が同じような感想を抱いているので、イメージから大きくかけ離れているということはないだろう。


「数レベル……それって凄いですね!」


 オルエッタの反応は実は少しズレている。


 普通の冒険者からするとドロップアイテム確定というのが人気だ。

 高ランクのボスモンスターのドロップアイテムともなると、どれも高額で売買されるものばかりだ。


 もしかしたら、超レアなスキルを手に入れられる可能性だってある。


 経験値は長年やっていればおのずと上がっていくので、そこまで重視する人はいない。

 オルエッタの場合、スキルが決まればアイテムを確定ゲットできるから、その辺の感覚がずれてしまっているようだ。


「今日の目的が決まると、ますます食欲が増してきました。あっ、リエさん! お代わりください!」


 おまえはいつでも食欲は常にあるだろう。

 その、ツッコミは心の奥底にしまっておいた。

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