第16話
「ああ。でも、荷物持ちくらいならできるから安心してくれ」
俺が朗らかに笑って胸を叩いて見せると、ギルド職員もゆっくりと頷いた。
「そう、ですね。分かりました。任務の開始日が四月十二日になります。当日の朝九時にギルド前に来てくださいね」
「分かった」
良かった。反応があまり良くなかったので断られるのではと思ってしまったが、依頼を受けられた。
ひとまず、お金の心配は多少ではあるがなくなったな。
そんなことを考えていると、ちょうど近くにいた冒険者たちと目が合った。
彼らの表情は明らかに馬鹿にしているものだった。関わりたくなかったが、彼らは俺に狙いをつけたようで真っすぐに近づいてくる。
「ちょっと聞こえたけど、あんた暗黒騎士なのか?」
「ああ、そうだけど」
「おいおい。そんな外れ職業で冒険者なんてやめたほうがよくないか?」
「そうそう。才能ねぇんだしな。ギルドにも迷惑だぜ?」
別にそんなことはないと思うが。
外れ職業で冒険者をしていると、こういった絡みはわりと多い。
実際、前世の俺も色々と酷い目にあったものだ。
前世の記憶がなければイラっとしていただろうが、さすがにそれなりに生きた経験もあるため、俺は自嘲したように笑って頭をかいた。
「んー、まあ日銭を稼ぐくらいはできるからな。そのくらいは見逃してくれよ」
なんてことを言いながら、足早に立ち去った。
変な奴とは関わらない。最低限、相手の求める発言をしてやり過ごす。
それが世の中を上手く渡り歩くコツなのだ。
宿へと戻った俺は荷物を部屋に置いた後、軽く体を動かす。
よし、まだ時間もあるし走り込みでもしてこようか。
俺がSランクになるには、とにかく他の人の数倍は努力しないといけない。
ステータスが変化するのを眺めながら、俺はトレーニングを楽しんだ。
それから俺は毎朝と迷宮帰りに基礎鍛錬を行っていった。
レベルアップと日々の鍛錬によって、俺のステータスはかなり上昇した。
レウニス レベル11 職業:暗黒騎士
HP2/2(限界値) MP231/231 力221 体力234 魔力225 速度226
職業スキル【暗黒騎士:レベル5】【暗黒魔法:レベル0】【暗黒騎士強化:レベル0】【余りポイント:5ポイント】
スキル【根性】【】【】【】
装備【】【】【】【】
ステータスが低い間の成長率はかなり良い。
問題は、これがある程度まで上がってからだ。
今の俺のステータスならば、Fランク迷宮の雑魚モンスターくらいには通用するはずだ。
だから、今日行わるGランク迷宮攻略においても大きな問題はないだろう。
今日は四月十二日。受領していた依頼の実行日だ。
言われていたとおりにギルド前へとやってきた俺は、そこに冒険者が集まっているのを見つけた。
あれが、迷宮攻略の冒険者だろうか? そう思えた理由は、彼らの装備がまだ低ランク冒険者らしい簡素なものだったからだ。
……まあ、彼らからすれば俺のほうが貧相な装備に見えているだろうけど。
その数は六名だ。
参加者が何名かは聞いていなかったが、攻略は十名程度で行うはずだ。
人数が多い方が安全ではあるが、連携などで問題が出てくるしな。無難に行えるのが十名ほどだ。
そのうち三から四名ほどが荷物持ちを務めるため、実際戦闘に参加するのは六人くらいになる。
俺がその場に到着すると、こちらへやってきたギルド職員が頭を下げてきた。
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