第3話
わざわざ直接販売してほしいなんて言われれば、どれほどのスキルかと想像していたのだろう。
その予想の遥か下をいくスキルだったのだから、戸惑われたのだと思う。
「ああ、そうだ」
「……本当に、【流れ星】でよろしいのでしょうか?」
「それで間違いない。それを四つ欲しいんだ。集めるのにどれだけかかる?」
「……そうですね。一週間ほど頂ければ、ご用意できるかと思います」
「そうか。それなら、すべて込みで、そのゴーレムメイルと交換でどうだ?」
【流れ星】は最低の評価を受けているスキルなので、五万から十万ゴールドあれば余裕で買えるだろう。
【流れ星】がいくら効果不明とはいえ、それでも身に着けた人は明らかに以前よりも……何か、調子が良いような気がする、らしいからな。
見つけ出す手間を含めても、最低百五十万ゴールドのゴーレムメイルと引き換えであれば、どう考えても『アルケイク』からすれば利益となる。
あとは、Sランククランが、果たしてこの程度の利益で引き受けてくれるかどうかという疑問はあるが……。
「承知しました。その条件で問題ありません。それでは契約書をご用意しましょう」
どうやら、俺の疑問は懸念だったようだ。
俺からすれば、すべての店を回って【流れ星】を見つけだす時間が無駄だったので、多少金がかかったとしても良かった。
リベティは部屋にあった棚へと向かい、その引き出しから紙を取り出す。
それは、俺が兄と行った契約書と同じ紙だった。
リベティがサラサラと契約内容を書いていき、そこで手が止まりこちらへと視線を向けてきた。
「ただ、こちらとしては……あまりにも破格の条件です。他に何かスキルをお付けしましょうか?」
わざわざそんな申し出をされるとは思っていなかった。
リベティからすれば、そんなことしなくても利益だけもらっておけばいいはずだが……優しい人だな。
これからも関わるかもしれないので、図々しさを見せるつもりはないが……俺もちょっと欲しいスキルがある。
訊ねてみるくらいはできるかもしれない。
「それなら、【劣勢強化・力】か【劣勢強化・速度】のどちらかも一つ欲しいんだが……可能か?」
「【劣勢強化・力】と【劣勢強化・速度】……ですか? 聞いた事はありますが、別にどちらも大したスキルではなかったと思いますが……」
確かに、一般的には使いづらいスキルなんだよな。
すぐに知識が出てくる辺り、さすがSランククランに所属しているだけのことはあるな。
「それなら、両方とも一つずつ用意してもらえるか?」
スキルストーンは今現在は四つしかつけられないが、ある程度レベルが上がれば解放されるようになる。
その時のために、大目に獲得しておけばいいだろう。
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