第58話


「お、オレたちも大丈夫だ」


 良かった。皆、何度か泳いでみて、感覚は掴んだようだな。

 ただ、ラーナさんの【狙撃手】の相性は非常に悪く、海中での戦闘はほとんどできないようなので、そこは心配ではあるが。


 ただ、海底神殿まではそう遠くない。

 急いで泳げば三十分ほどで到着できるだろう距離なので、道中の戦闘を極力避けて進めばいいだろう。


 そんなことを考えながら海へと向かう。

 海水が足に触れ、そこからじんわりと冷やされていく。


 今は夏ということもあり、オルエッタが言っていたように海というのは悪くない。

 隣に並んだオルエッタも、気持ちよさそうな声を上げる。


「わあ、ひんやりしていていいですね!」

「……そうだな」


 そう返しながら、俺たちは進んでいく。

 やがて、海水が深くなっていき、俺たちはそのまま中へと進む。

 後ろを荷物持ちのブールたちも着いてきているのを確認してから、どんどんと泳いでいく。


 運がいいのか、魔物と遭遇することなく海底神殿目前まで到着する。

 さっさと中に入ろうかとしたときだった、近くで歪みが発生し、そこから魔物が現れた。

 

 巨大な魚の魔物、ブルーピラニアだ。

 獰猛そうな牙を見せつけるようにしてこちらへと迫ってくる。

 動きは速いが、十分ついていけるな。


 それに、【水中呼吸】のスキルには水の中での動きに補助をかける効果もある。水中と地上という違いはあるが、それでも今の俺たちは水中でも問題なく動けていた。

 俺はブルーピラニアの攻撃を横に泳いでかわし、その体を切り裂いた。


 ブルーピラニアを、一撃で仕留める。

 さらに数体のブルーピラニアが出現し、同じように突っ込んでくる。

 俺は自分自身に注目を集めながら、それらをどんどん狩っていく。


 死体が残るのなら焼き魚でも楽しめたかもしれないな。

 そんな呑気なことを考えながら魔物の群れを仕留め、俺たちは海底神殿の中へと入った。


 中に入るとき、空気の膜のようなものを通過した。

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