『学園中のトイレ掃除をやって欲しいんだ』

 確か彼女は三年X組のユーリ・フィロティシアだ。

 特殊な授業が行われているこの学園でも、W~Y組までは他のクラス以上に特異なものたちが集められていて、どんな授業が行われていて、どんな力を持っているのかマリンにもまったく未知数な領域にいる生徒だ。


「それで、私はなぜ呼ばれたのでしょう?」


 やはり幾ら考えても理事長に呼ばれるようなことをした覚えはない。マリンは理事長を見つめると疑問をぶつけた。


「それは私も伺いたいですねぇ」


 マリンに続いてユーリも、口元に薄い笑みを浮かべて理事長に向き直った。


「今日、君たちに来てもらったのは他でもない。君たち二人にやってもらいたいことがあるんだ」


 理事長はどこか間の抜けた仮面で二人を順番に一顧すると、強い口調で低く言った。


「やってもらいたいこと、ですかぁ?」


 なにか事情がありそうな重い口調で話す理事長に、薄く微笑を浮かべたままでユーリが先を促した。


「うん。実はね、二人に学園中のトイレ掃除をして欲しいんだ」


「帰ります」


 理事長が身を乗り出して言った言葉にマリンは間発入れずに即答し、踵を返して理事長室を後にしようと歩き出すとユーリも一緒に着いて来る。


「と言うのは冗談でぇ、君たちはこの学園の同盟国を知っているかい?」


 不意に掛けられた質問にマリンが足を止めて振り返り理事長を見た。


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