『これからあの子の深層へお連れします』
〈これからあの子の深層にお連れします。少し辛いですけど我慢してください〉
「辛い?」
突然告げられた言葉に目を丸くして問い返した瞬間、ユーリの返答も聞かぬ間にそれは訪れた。
体を流れる波動にまるで異物が混入したようなざらついた感覚が全身を駆け抜け、次第に強引に体組織を書き換えられているような錯覚に陥り、細胞や血流が動きを狂わされたように体内を掻き回されているような違和感を覚えた。
「なにが……起きてるの……?」
目を開くと、まるで周波数のあわない衛星番組を眺めているように視界も砂嵐に覆われていて、なにがなんだか良く分からない。
〈いま……の……うと……、せ……つ……く……て……る……す……。しも……のこと……の……、いこ……り……せん……〉
聴覚も同様にノイズが酷くて、傍受された無線のようで、あれだけ精神に響いてきたユーリの綺麗な良く通る声も、途切れ途切れになってうまく聞き取れない。
ユーリは今マリンを少女の深層へ導くために頑張ってくれているのだ。マリンが先に音を上げるわけには行かない。
マリンはその状態を維持したまま必死で耐えていたが、まるで闇に吸い込まれていくように徐々に意識が遠ざかって行った。
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