『キモッ……』

 何処までもゆっくりと沈んでいくような浮遊感に襲われ、ようやく足許が地面に着いてマリンはゆっくりと瞳を開いた。気分的には地獄の底にでも落ちたようだ。

 視界は白と黒の二色限りで、相変わらず砂嵐越しでものを見ているような光景だった。

 今、何処にいるのか全く見当もつかず、まずは現状を把握しようと周囲を見回す。

 一緒にいたはずのユーリの姿がなければ大鎌さえも握っていない。マリンには自分の身に何が起きたのか理解ができなかった。

 辺りにはマリンが両手で抱えても手が回らないくらいに太く、見上げても頂上が見えないくらいの、大きなガラスの管が幾つも並べられている。

 まるでSFの映画にでてくる、人造人間や複製人間を作り出す装置を目の当たりにしたような気分になってゾッとした。

 右を見ても左を向いても視界の続く限り同じガラスの管が等間隔で並べられていて、とてつもないくらいに広大な敷地の、研究所か工場にいるのだと認識した。

(研究所……?)

 まるで見覚えのない光景に、なぜこんなところにいるのだろうと困惑しながら、マリンは視界が悪い中、周囲を警戒しながら気の赴くままに歩みを進めた。

「わっ……! なによコレ……。キモッ!」

 マリンはカプセルに近付いて中を覗き込み、薄気味悪くなって慌てて離れた。

 カプセルの中は液体で満たされていて、中には胎児のようなものから動物のようなもの、他にも見たこともない草花や昆虫のようなものが、理科室のホルマリン漬けのように浸かっている。

 ここにいることに何か意味はあるのだろうとは思うものの、全く理由が分からない。

 なにをするべきなのかを考えながら、マリンはまず人がいないかと探すが、この広い施設の中で誰かに出会うのは途方もないことのように思えた。

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