『……』

 三人が眠っていたのが学園の医務室だったと言うことを、マリンは部屋を出てみて始めて知った。

 元は王宮だったため、学園にしては無駄に豪華に、端が見えないほどに深く奥へ伸びている見慣れた廊下を、マリンは突き進んでいく。


 マリンは今日休みをもらっているが、他の生徒にとっては普通に平日であり、廊下を歩いていると、当然だが時たま生徒を見掛ける。

 生徒たちの中には、風紀委員のマリンを煙たがるものや畏怖するものもいるが、なにもしなければ罰したりはしない。自分に後ろめたいことがないのなら堂々としていればいいのだ。


 時計を見るともう放課後の時間だったが、最終下校時刻までには弱冠の猶予があるため、ただ放課後のおしゃべりや部活を満喫している生徒を取り締まる必要はない。

 平和が一番だと思いながらも違反者を探している自分に矛盾を感じながら、自分が違反者を取り締まっているから学園を平和なのだと思い直して、取り敢えず風紀委員室へ行くか、それとも教室に顔を出すか考え、結局教室へ行こうと自分の教室を目指して廊下を進んだ。


 その時、廊下の先でふわふわの金髪を靡かせながら角を曲がる小柄の少女の後ろ姿が視界に入り、マリンはハッとして駆け出した。

 そんなはずはない。彼女がここにいるわけがない。

 彼女はこれから、アニマムンディの施設で新しい生活を送っているのだから……。

 頭では分かっている。理解しなければならないと思っている。それでも感情が追いつかなかった。

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