『これからどうするかです』

 爆発が収まったのを見計らい、三人は地下道から這い出した。

 少女の巨大な波動の塊が二人の頭上から襲い掛かってきたとき、先に発動させた中和が持続してたマリンはまだ中和を発動できず、ユーリは疲労を回復させるために波動を抑えていたために防衛壁を作りだせない、絶体絶命の状況だった。

 二人は対応できず視界いっぱいに広がり、周囲を破壊しながらなおも近付いてくる巨大な光の弾を、呆然とただ見つめることしかできずにいたら、突然地面が割れて地下に落とされたのだ。

 地下にはクレオが待機していて、すぐさま波動を発動させて少女の波動を固める作業に取り掛かった。

 先日、タロットのアストレスと言う男の茨を固めた術だ。

 そのおかげで少女の波動の直撃を免れた上にユーリが防衛壁を作り出す時間も稼げ、猛烈な衝撃波は食らったものの、あれだけの爆発が起きたにも関わらず、致命傷に至るような大怪我は避けることができたのだ。

 マリンも中和をしようとしたが、中和では波動は消せても二次災害である爆発は消すことができない。タイミング的にもマリンが中和を使ったら二人の邪魔になってしまっただろう。

 だから大人しくしていたのだ。

(守られてるな……)

 マリンは地下から這い出しながら溜息を着いた。もしもマリンが二人のように波動が使えていたら、もっと負担を減らせたはずだ。いや、波動だけではない。中和にしてもちゃんと使いこなせたら、二人の助けになるだろう。

「はぁ……」

 なんだか自分が情けなくなって、さらに深い溜息が出た。

「どうしたのですか? 溜息なんて着いて……」

 先に地下から出ていたユーリが手を差し出しながら問い掛けてきた。

「なんでもない。気にしないで」

 ユーリの手を握り引き上げて貰って地上へ出ると、マリンは頭を小さく左右に振った。

「どうせ足を引っ張っているなとか、守られてばかりいるなとかの類のことを考えていたのでしょう?」

 口許に薄く笑いを浮かべてユーリが楽しそうに微笑んだ。まったく見えているかのようにマリンの心情を言い当ててくれる。

 素直にそれを認められずにマリンが唇を尖らせると、周囲を見回した。

「凄い状況になっちゃったわね。あの子を止められていれば……」

 まず目に付いたのは町の出口付近にぽっかりと空いた、隕石が衝突したように抉られた大きな穴だ。未だに黒い煙をもくもくと立ち上げ、少女の波動の凄まじさを物語っていた。

 爆発は町の三分の一にも及び、綺麗にペイントされた可愛らしかった三角屋根の家々は無残にも破壊され、道路も噴水もただのコンクリートの瓦礫と化し、残った箇所にも皹が伸びて今にも崩壊してしまいそうだ。

「過ぎたことを言っても仕方がありませんよ。問題はこれからどうするかです」

 ユーリが隣に並んで町を見回して静かに囁いた。

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