『イングヴァイさんを蝕んでいき……』

 視界の隅では、動きを止めたマリンとユーリに異変を感じたのか、クレオが走り回って戦闘機の注意を引き付けていてくれている。


「それじゃあ、そんなことをさせるために選ばれた私はどうなるのよ!

 あなたとこうして心を通わせて……、あなたを信じて……、あなたとなら、一人じゃあどうしようもできないことだって乗り越えられるって信じて、命を預けた私はどうなるの!」


 正直、ほとんど限界であったが、マリンは残った力を振り絞って治癒へと変換させて、全力でユーリに注入しながら言葉の限りで叫んだ。

 大鎌を握る手には感覚がなくなり小刻みに震え、足にも力が入らずガクガクと痙攣していて、今にも崩れてしまいそうだ。

 それでもマリンは、治癒の力を大鎌に流し込むのを止めなかった。

 ユーリがマリンの波動を受け止めてくれれば、また強大にして返してくれるはずだ。そうすれば、体などすぐに回復できる。

 これは賭けだった。

 無謀かもしれないが、ユーリに分かって貰うにはこれしかないと思ったのだ。


〈それは今だけです。私は創作者の呪詛と一緒にこの世に作り出された禁忌の鎌。

 戦士でもない農民でも人を殺めることができるようにと、敢えて農具を凶器に改良し、本来あるべき姿を捻じ曲げてまで殺戮の道具として作られた、呪いの武具なのです。

 私の持つ呪いは、接続するたびにイングヴァイさんを蝕んでいき、やがては……〉


「違うわ!」


 マリンはユーリの言葉を遮って強く言い放った。

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