『小石では山の大きさは計れないってことね?』

 金髪の少女が歩くたびに、溢れ出す波動が砂を押し退け、水面に石を投げ入れたときに浮かび上がる波紋のように砂が舞い上がる。

「ぐぅ!」

「見た目通りでは……、ないみたいですね……」

 近寄ってくる少女を見つめて二人が喉で呻いた。様子を伺うと硬直させたように小刻みに体を震わせている。

「どうしたの?」

 ただならぬ事態になっているのを察して、マリンは二人に小声で問い掛けた。

「ううん。なんでもない。大丈夫大丈夫……」

 強張った顔で無理やりに笑みを作ってクレオは歩み出るが、やせ我慢をしているのが見てとれた。

「私もその人も、あの子の波動に気圧されて、体が萎縮してしまっているのですよ」

 ユーリでさえ余裕の消えた表情で呼吸を乱しているが、戦意は喪失しておらず右手を振り翳して、何処からかさっき絡繰人形を切り裂いた黒い大鎌を取り出した。

「私はなんともないんだけど……?」

 魔道器を取り出して金色の波動の剣を作り出すと正面で構え、視線だけで交互に二人を見て問い掛けた。

「それはあまりにも大きな彼女の波動に、イングヴァイさんの感覚が麻痺してしまっているのですよ」

 手元でクルクルと大鎌を回すと、強く握り締めて刃を上に向けて下段で構えた。

「小石では山の大きさは測れないってことね?」

 認めたくはないがそういうことなのだろう。

 あまりにも差があり過ぎて、全体を見ることもできないのだ。

 それがマリンと金髪の少女の実力の差だった。

 中和で彼女の術を消し去ることはできるが、それでここにいる人たちは守っても、彼らは他の町へ行って同じことを繰り返すだけだ。根本的な解決にはならない。

 一人では適わなくても今は二人が一緒にいてくれる。

 如何に力の差があろうと、三人で力を合わせれば必ず勝てる。マリンはそう信じて魔道具を握る手に力を込めた。

「行くわよ!」

「うん」

「はい」

 マリンの掛け声に二人が返答すると、三人は駆け出して金髪の少女を強襲する。

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