『タロットも噂ほどではないな』
「ん~。まぁ、タロットだしね。当然の報いかなぁ?」
もう少し何かしら言われると思っていたが、クレオは相手がタロットの所為かやたらと淡白だった。マリンは煩わしい思いをしなくて良かったという思いと、それでいいのかという疑問に、複雑な心境になった。
「ちょっとそれでいいの? 相手は無抵抗な老人よ!」
自分でやっておいてなんだが、あまりのクレオの言葉に思わず口を挟んでしまった。
「えぇ~? 自分でやっておいてそれを言う?」
「うっ、いや、だって……。あまりにも薄情だったから……」
なにも考えないでいつもの習慣で指摘してしまったがクレオに逆に苦笑混じりで開示され、マリンは口篭ってしまった。
「いいじゃないですか。何はともあれこれで残るは二人。やっと事件の終わりが見えて来たのですから……」
ユーリが口許で薄く微笑みを浮かべて残る二人、スーツの男と金髪の少女を瞳を細めて見つめた。マリンとクレオも誘導されるように二人に視線を向けた。
スーツの男は、この状況でも何事もなかったように不敵に笑っている。
「ソードの三に七。それとワンドの十か……。
やれやれ、小アルカナのナンバーズが三人もいて、この程度の仕事も満足にこなせないとは、期待外れも良いところだ。タロットも噂ほどではないな。
君はお披露目もまだだから正式な役職はないが、実力ならエース、はたまたクイーンにさえ入れるものを与えた。私を失望させるなよ」
スーツの男が低く語り掛けると、金髪の少女は小さく頷いて前に出た。その全身からは凄まじいほどの波動が漲り、長い黄金の髪を水面に漂わせるように揺らしている。
その瞳に宿るものは、三人に対する純粋なる怒りだ。
怒りという感情は、意識を一点に集中させる。
波動は集中すればするほどに昂ぶり、練られ、研ぎ澄まされていく。
練られた波動は攻撃に転じれば山でも砕く強烈な豪砲になり、防御に徹すれば嵐にも動じない強固な盾になる。
彼女との戦闘は激戦になることが安易に予測された。
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