『生意気だよ‼お前』
だが、ユーリは腕を刃にして全てを切り伏せると、アストレスを冷たい眼差しで射抜く。
「遠慮しておきます」
切り裂かれた茨はそのまま無造作に地面に散らばると、ミミズがのたくるように不気味に蠢いている。
「生意気だよ。お前!」
アストレスが怒りを露に声を低くして言うと、地を這いずり回っていた茨が地に根を生やし、そこから新たな茨になってユーリを強襲する。
ユーリは軽やかに宙を舞いながら全身から鮮やかな紫色の光を放つと、人のシルエットを崩して成人男性よりも大きな大鎌へと変貌を遂げ、クルクルと回転をして襲いくる茨を薙ぎ払いながらマリンの元へ飛んできた。
鎌の回転は速いはずなのにマリンにはその動きが手に取るように分かり、掴もうと手を伸ばすとまるで吸い付くように手の中に収まった。
(え……? なにこれ……? 軽っ……)
これまで槍や薙刀の訓練は受けてきたが年齢や体格に合ったものでさえ重く、使いこなすにはかなりの体術が必要だった。
その中でも大鎌の扱いは特に難しく、使い手が未熟であれば自らをも傷つける諸刃の剣とされている。
だが、ユーリが変貌した大鎌は軽く、まるでバトンのように使いこなすことができた。追撃してくるアストレスの茨を容易く細切りにできるほどだ。
それはマリンが持つ技術ではなく、ユーリがマリンの動きに合わせてくれているのだと感じた。これが意思を持つ武器を扱うと言うことなのだと感心した。
「へぇ……。まともな武器を持っているんじゃないか。だけど、僕との戦闘に気を取られている場合じゃないんじゃないかい?
早く触媒を壊さないと、彼らが増えるだけだよ?」
アストレスが横目で周囲に視線を投げると、人垣となって押し寄せてくる、術でできた人型をクレオが一人で必死に固めている姿が目に入った。
マリンとアストレスが対峙している間、クレオが一人で対応をしていてくれていたのだ。
マリンは大鎌を構え、クレオの援護をするため、人型へ突進すると、地面を強く踏みしめ身体の遠心力を利用して鎌を大きく横凪ぎに振った。
大鎌から波動の奔流が迸り、人の形を象る敵の術を軽々と薙ぎ払ったが、触媒を壊せたわけではないため術はいまだに発動し続け、人型は次々と出現し、あっという間に視界を覆うほどの人垣となって押し寄せてきた。
マリンは奥歯を噛み締めて、押し寄せてくる術の人壁に備えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます