『ノノがすっごく心配していたよ』

「やっほ~」


 マリンは教室の扉を開けると同時に片手を上げて声を掛けた。放課後と言うこともあって、教室には仲の良い女子のグループが何組か残っているだけだった。

 特に仲の良い子はいなかったが、普通に話す程度の級友は何人か残っている。


「あれ? マリン?」


「マリン? 今日も休みじゃなかったっけぇ?」


「特別任務に行ったって聞いたけど大丈夫なの?」


 一つの机を囲んで話していた三人組が、マリンに振り返ると笑顔で席を立って、三人同時に質問をしながら近付いてきた。


「よっ。ああ、うん。休みっていっても朝から医務室で休んでたのよ。療養ってやつ?

 そんで帰る前に顔出しにきたってわけ。なんか変わったことはなかった?」


 三人同時の質問とは言っても、一つひとつが大した内容のない言葉だ。一度でまとめて返しても問題はないだろう。実際、三人に気を悪くした様子はない。


「お休みなのに巡回? 大変だねぇ」


「医務室で? ああ、この学園の医務室は下手な病院より医療品揃ってるわよね」


「そんな大層なことじゃないわよ。ここには時間を持て余したからよっただけだし、医務室にいたって言ったって、ただ、寝てただけだし」


 マリンが冗談を混ぜて軽く言うと、三人は声を上げて楽しそうに笑った。


「ノノがすっごく心配してたよ? 口では悪態ついてたけど」


「ああ。なんか、その姿が脳裏に浮かんでくるわ。明日会うんだし、問題ないでしょ」


 困ったように苦笑を浮かべる少女の言葉で、ノノがマリンよりも自分のほうが相応しいと息巻きながらも、気になってマリンの話しかしていない姿が脳裏に浮かんだ。

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