『今日、転校生が来たよ』

「ああ、変わったことっていうとぉ、今日、転校生がきたよぉ?」


 藍色のストレートの髪を背中の半ばほどまで伸ばした、いつも眠そうにしている暢気そうなルナが間延びした口調で言ってきた。


「転校生? 今、七月よ? 随分と中途半端な時期に来たわね。

 でも、この学園じゃ珍しくもないか……」


 新学期が始まって三ヶ月。五月にゴールデンウィークが終わって、そろそろ中間テストに備える時期である。転校してくるにはあまりにも不利ではあるが、この学園はその特性上、それも珍しいことではなかった。


 隔世遺伝というものがある。特殊な遺伝子が何世代も後になって突如現れるものだ。

 例えば、両親やその親族は普通の人間だが、遡って見たら先祖に聖獣や亜人種が紛れ込んでいたとしよう。

 その血は世代を重ねるごとに薄まっていき、やがては綿密な鑑定をしても検出されなくなり、それと同時に人ならざるものの力は失われていく。

 しかし、急にその遺伝子が覚醒して、特殊な能力に目覚めることが稀にある。

 そんな状況に直面したとき、本人は勿論のこと、その家族もが戸惑い、どう対処すべきか明確な答えを導き出すことは困難だ。

 そんな子供を引き取り、力の使い方を教えるのがこの学園の目的である。

 困り果てた家族は藁にも縋る思いで学園の門を叩いてくる。

 力を持つものやその家族にとっては、テストや行事などは些細な問題でしかなく、三百六十五日二十四時間、いつ編入してくる生徒がいてもおかしくないのだ。


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