『シャ……ナ……?』

「まぁね。急に自分の中に流れる人間以外の血に目覚めた人は、大半が混乱して力を暴走させるから、それ以上、周りに危害を出さないためにも、多少強引にでも学園に編入させるしかないのよ」


 茶色のロングの髪にウェーブに掛けた、まるでグラビアアイドルのようにスタイルの良い、沈着冷静の少女、シズクが腕を組みながら遠くを眺めるように視線を走らせて短く告げた。

 級友と言っても家庭の事情まで把握しているわけではない。

 もしかしたら、彼女がこの学園にきたのにはそれに近いなにかがあったのかも知れないが、安易に踏み込んではいけない気がした。


「その転校生はどうしたの? 今日はもう帰った?」


 マリンは話題を逸らすために転校生の話を持ち出しながら、もし教室に残っていたら失礼だと視線を巡らせて、知らぬ顔はないかと確認したが、見知らぬ顔はなかった。


「シャナちゃんなら今は屋上に行ってるよ? 誰か探してるみたいだったから手伝おうとしたんだけど、意思疎通に失敗しちゃって……」


 茶色の髪を肩口でおかっぱにした、カチューシャが可愛らしい元気にハキハキと喋るトモが、困ったような苦笑を浮かべながら教えてくれる。


「シ……ャナ……?」


 トモが口にした思いも寄らない名前に、マリンは驚愕して瞳を見開いた。いや、そんなはずはない。タイミングは良すぎるが彼女はアニマムンディの元にいるはずだ。

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