第43話『我々が責任を持って連行する』

巡洋艦は、十字架がマントをして王冠を被った紋章を掲げている。

 平和進行協会・アニマムンディの軍隊が到着したのだ。

 アニマムンディにとって十字架とは人の象徴であり、装飾は各エリアが主張しているものである。王冠とマントは人こそ宝という信念の元に活動している、水のアニマムンディが象徴として掲げているものだ。

 アニマムンディは日、月、火、水、木、金、土に別れていて、世界を七つに分けてそれぞれが担当し平和維持に努めている。

 ここはその中の水の担当区域ということになる。

 辺りに巡洋艦が着地できるだけのスペースがないため、艦は空中で停滞したまま軍人たちだけが降下してくる。

 通常ならばパラシュートなど用いる高さであるが、アニマムンディの軍人は波動術者であることが前提なため、各自、術で落下速度を調整しながら装備なしで落下してくる。

 二十人程度が岩山に降り立つと、手分けをしてタロットの工作員の捕縛、連行を始め、その中で一番地位の高い腕章を着けた男が二人の下へ歩み寄ってきた。

 マリンは岩山から降りると近付いてくる男を見つめた。

「アニマムンディ『水』、空軍大佐ユーザ・ニュロテスだ。

 タロット幹部小アルカナ、『ソードのスリー』、アストレス・ニンフ及び、工作員凡そ百人の逮捕の協力、感謝する。

 この者たちは我々が責任を持って連行する」

 金色の髪を短くして立たせ、青い軍服をだらしなく着崩した男が、ポケットに手を突っ込んだままで義務的に口上を述べてきた。

 長身で姿勢も良いが少し強面で、さらにはめんどくさそうに対応しているため、どうしても柄が悪そうな印象を受けてしまう。

「ご苦労さまです!」

 思わず眉間に皺を寄せてユーザを見返していると、クレオが笑顔で返答した。

 ユーザは会釈をすることもなく髪を撫で上げながら踵を返すと、声を上げて連行中の軍人たちに激を飛ばし、作業を急かした。

 二人が見守る中、意識のないものも意識はあるものも寝袋のような担架に入れられ、革のバンドで拘束されると、次々と巡洋艦へと吊り上げられて行く。

 最後の一人、アストレスと言うらしい青年は一命を取り止めたが、やはり一番の重症らしく、他のものの何倍という処置とそれ以上に厳重な拘束をされ、慎重に吊り上げられて行ったのを見届けると、二人は顔を見合わせてほっと胸を撫で下ろした。

 アストレスが亡くなっていなかったことと、アニマムンディに連行されて、もう襲われることのない二つのことに安心したのだ。

 アストレスが巡洋艦に収納されると、ユーザが再び二人の下へ寄ってきた。

「お前らも学園まで送ってやる。乗れ」

 ユーザはぶっきらぼうに言い放つと、親指でタロットの工作員が連行されているところを指し示した。

 正直、これからまたあの下水を通って学園まで戻る気力は沸いてこない。その心使いは有り難かったが今は一人ではない。勝手に承諾するわけにも行かずに確認にクレオを見ると、クレオも同じことを思っていたらしく、マリンを見返して肯定するように頷いた。

「お願いするわ」

 二人を代表してマリンがユーザに告げると指し示された方へ歩いていった。

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