『仲間は裏切らない』

「ん~。大丈夫だよ。殴られる寸前で硬質化させて防御したからね」

 いつからそこにいたのか、クレオは振り返ったマリンの傍らに立っていて、相変わらずの糸目でにんまりとした笑みを浮かべて頷いた。

「今までなにしてたのよ?」

「あまりの威力に軽く気を失ってたのは本当だよ? 目が覚めたらあの子はもう縛られてたから二人の話を聞いてた。ユグドラシルについてだったしね。

 ゆ~りんはちょっと前から私に気付いてたよ?」

 傍に居ながら声も掛けなかったクレオにマリンが瞳を細めて苦情を言うと、クレオは悪びれた様子もなく笑顔のまま見返してきた。

「それなら加わりなさいよ。ユグドラシルの外も内も知っているあんたなら答えを持ってるでしょう?」

「ん~。ユグドラシルのエージェントって言っても、私は立場的にはまだまだ中堅くらいだからあまり深層にまでは触れられないけど、まぁ、正直、他人には言えないようなこともたまにはしているかな? だけど、組織内の人に恨まれるようなことは絶対ない。これは断言できるよ」

 クレオは瞳を開けると人差し指を立ててはっきりと言い切った。彼女がここまできっぱりと断言するのなら信じたいとマリンは思う。

「嘘だ!!」

  マリンがクレオの言葉に頷こうとしたとき、何時の間に目を覚ましたのか少年が怒号を上げた。

「噓じゃないよ。ユグドラシルは仲間を裏切らない」

 クレオは少年をまっすぐに見つめて再びきっぱりと言い切る。

 そのクレオの言葉に噓は全く感じられない。ユグドラシルは敵に対してはどうであれ、組織内の人間に非人道的なことはしていないのだろう。

「お前たちなんて……、お前たちなんて……!」

 クレオの言葉に耳を貸さず、少年は怨嗟を露にさせた瞳で三人を睨みつけると、ガチガチと歯がなるほどに筋肉を震わせて低く唸ると、一際強く奥歯を噛み締めた。

「イングヴァイさん!」

 ただならぬものを感じたがどうしたらいいか分からず、戸惑っているとユーリがマリンと少年の間に割って入って波動で防護壁を造った。

 次の瞬間、少年の体が爆発した。

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