『クレオ!』

 準備は整った。後はクレオがマリンの傍らを通り過ぎるのと同時に力を解放するだけだ。マリンはそのタイミングを計り、接近してくるクレオの動きに注意を払った。

 クレオの走る速度を目測して、頭の中でカウントダウンを始める。

 数字を若くなるに連れ、筋肉の力の籠もる場所が変わっていくのが自覚できた。

 どんな強大な力であろうと、使うタイミングを誤れば不発に終わってしまう。マリンが絶好の瞬間を図っている中、クレオが岩に足を取られて岩場に転がった。

 普段ならばこんなことはないだろう。彼女の疲労はそこまで重度だったのだ。


「きゃん!」


 マリンが数えていた二秒手前のことだった。張り詰めていた緊張が一気に弾け飛び、蹈鞴を踏んで体制を崩してしまった。が、すぐにクレオが心配になって顔を上げて鎌を構えなおした。幸い波動は高まったままだ。


「クレオ!」


 転んだクレオは機銃の銃撃からは逸れたが、頭上から雨のように降る爆弾が襲い掛かる。今からマリンが大鎌を振るってもクレオを救うことは叶わない。

 それでも少しでも被弾を抑えられればと、投下されてくる爆弾に向けて斬撃を放とうとした瞬間、側面から一筋の光が駆け抜け、爆弾を射抜いてすべてを爆発させた。

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