『私のために怒ってくれたんでしょ?』
「あ~あ。我を忘れて余計なことしちゃったのか……。クレオの尾行の邪魔をして、もしかしたら発信機を着ける邪魔までしちゃったのかもしれない……。
だめだなぁ。私は……。もっと冷静にならなきゃ……」
マリンは自己嫌悪に陥り、溜息と一緒に吐き出した。
「ぜんぜんダメなんかじゃないよ」
クレオがいつもとは違う優しい笑みを浮かべ、ゆっくりと頭を左右に振って否定した。
てっきり笑われると思っていたマリンはクレオの意外な言葉に少し驚いて視線を向けた。
「だって嬉しかったもん。私のためにあんなに怒ってくれたんでしょう?
誰かが私のために怒ってくれることなんて滅多にないから凄く嬉しかった。
ほら、私って一人で行動することが多いじゃない? 一週間とか長い時間一人でいるとね、時々何のために戦ってるのか分からなくなってくることがあるんだよ。
だから、あんな風に態度とかで表して貰うとすごく気力がわいて来るんだ。
ああ、私はこういう優しい人を守るために戦ってるんだって……」
クレオは柔らかな笑みを浮かべたまま、まっすぐにマリンを見つめてゆっくりと言うと、瞳を細めた。
「あんたの気持ちを掴むのに成功しても、作戦に失敗したんじゃ仕方がないでしょ!」
クレオの言葉でかなり救われたが、それでも客観的に見れば明らかに足を引っ張っているのが明白で、素直に喜べずに憮然とした。
「作戦は失敗なんてしてないし、全然足も引っ張られてないよ。
それどころか、鼓舞してもらって私は気力満タン!
味方を鼓舞してやる気を出させられるのは、リーダーの資質だよ?」
「先導者はクレオでしょう!」
冗談も含めて言うクレオに、冗談だと分かっていながらも思わずマリンは突っ込んだ。
「おおっ、そうだった……」
いつものにんまりとしたにやけ顔で、大袈裟に驚いた、何処まで本気なのか分からないことを言うクレオに、マリンは呆れてジトリとした視線を送った。
「まったく……」
マリンはわざとらしく大きな溜息を吐き出した。
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