『どうしてそこまで!!』

「その鎖切れないわ! いい加減諦めなさい」

「馬鹿にするな! ユグドラシルに掴まるくらいなら、ここで死んでやる!

 俺はユグドラシルには死んでも負けねぇ!」

 マリンは淡々と告げるが、人影は恨みに瞳をギラつかせて、自身に巻きつく鎖を握り締めると力任せに引き千切ろうとしたが鎖に傷さえもつける事ができずに、逆に少年の指が裂けて大量の血が溢れさせて鎖を真っ赤に染めたが、それでも少年は抗い続けている。

「ちょっと止めなさいよ! 血が出てるじゃない! 腕が千切れるわよ!」

 血が吹き出しても鎖を引き続ける人影の少年を見て、マリンは思わず声を張り上げた。

「イングヴァイさん、気を抜かないで」

「あっ、うん」

 怪我をしても怯まない少年に気を取られてしまったところをまたまたユーリに指摘され、マリンは気を引き締めて魔道具を強く引いた。

「クソォ……!!」

 少年は無理だと分かっているだろうに諦めきれないのか、血塗れになっても怒号を上げていまだに抵抗を続けている。

「なんでよ? どうしてそこまで……」

 腕がさらに深く裂けたのを見て、居た堪れなくなってマリンは少年に問い掛けた。

「ユグドラシルなんかに、負けられないんだよ!」

「少し、見苦しいですよ? あなたはもう負けたんです」

 逃れられない鎖の中で足掻く少年に向けてユーリが冷たく言い放つと、背後に回り首筋に当て身を食らわせて失神させた。

「ク……そ……」

 少年は忌々しげに吐き捨てると、白目を剝いて力尽きたようにその場に倒れこんだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る