『私はなんともありませんよ?』
「あれ? マリンどうしたの?」
マリンが横穴に入ろうとしたとき、反対側からクレオがやってきてちょうど鉢合わせになった。クレオは相変わらずの糸目でにんまりとした笑みを浮かべると、軽く首を傾げて聞いてくる。
「遅いからどうしたのかと思って」
マリンは引き上げようとクレオに向けて手を差し出すと、マリンの意を悟ったのかクレオが握ってきた。マリンはそのままクレオを引っ張り込んでやると、クレオの後ろにユーリの姿もあった。
マリンはほっと胸を撫で下ろしながら、クレオがユーリを迎えに行ったのだと理解した。
「大丈夫?」
マリンは続いてユーリに向けて手を差し伸べる。
「はい。私はなんともありませんよ? ただ、早くなんとかしないと、町の人と金髪のあの子が生き埋めになってしまいそうでしたけど……」
ユーリはマリンの手を握りながら、笑顔で怖いことを言ってくる。まるで他人事のように冷ややかに言ってはいるが、彼女なりに気にしているのだ。
でなかったら、ここから出たら自分たちが危険に直面するこの状況で、わざわざ外の話題を持ち出したりはしない。安全が確認出来るまでここに潜んでいればいいのだ。
早くあの戦闘機を倒さなければ、シャナも町の人も危険だと言う彼女なりの警告だった。
決して忘れていたわけではないが、改めて言葉として聞くと衝撃が走った。
岩山の狭間に身を隠せば凌げると踏んでいたが、戦闘機の爆撃で岩山は破砕されていた。
今、こうしている間にも犠牲者が出ているかも知れないのだと思い知らされた気分だ。
ぎゅっと奥歯を噛み締めるとユーリを引っ張り上げて空洞に入れ、入れ違いに出て行こうとした。早く戦闘機を倒さなければ、あの科学者を止めなければ、今度はシャナを殺されてしまう。
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