『一つだけ……』
「んぅ……。機関銃は波動を弾けないみたいだったね」
「あれを壊したの私でしょう? 知ってるわよ!
それに、機関銃を壊してもなんの影響もなかったでしょう? もっと有効な手段がないの?」
少し何かを思案した末に、苦笑を浮かべながらようやく口を開いたが、それを思いついたのも実行したのもマリンであり、結果もしっかりと見届けている。今更教えて貰うことでもなかったが、そんなことはクレオも百も承知だろう。
それでも敢えてそれを口にしたのは、百戦錬磨のクレオが見ても弱点らしい弱点を見つけられなかったのだろう。そう考えたら絶望的だった。
「一つだけ、きっと有効な手段があります」
ユーリは小さく告げるとクレオの手を取って波動を注ぎ始めた。
虐めを始めたのかと思いきや、波動がクレオの体を淡い光で包み込んで体力の回復を促している。町でシャナの攻撃を受けて動けなくなったマリンにしてくれたのと同じ術だろう。
「あんっ、ゆ~りん、いいっ……」
「変な声を出さないでください。少しは回復したようですけど、それじゃあまだまだ戦力にはならないでしょう? 仕方がないので癒してあげます」
面白半分に、クレオが聞いているほうが恥ずかしくなるような艶のある高い声で言ったが、ユーリは能面のような冷めた笑みを口許に宿して冷ややかに返した。
「癒し? 今、治癒しているの?」
波動とは、高い身体能力と広い視野を得て、如何なる直面に立たされても自分と仲間を生かすための力だとマリンはこれまでレクチャーを受けてきた。
だが、人の傷を癒すことができるなんて聞いたことがない。
まぁ、単純にマリンがその域に達することができなかったのかもしれないが……。
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